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カプセルホテル 大阪に少ないワケ(とことんサーチ)

発祥のち規制 商人魂の壁

ついお酒を飲み過ぎた。仕事で終電を逃した。そんな時はカプセルホテルがある。日本初のカプセルホテルは1979年にニュージャパン観光(大阪市)が梅田で開いた「カプセル・イン大阪」だと知っている。だが「発祥の地」の割に、街の規模の割に軒数が少ない気がする。本当に少ないのか、なぜ広まらなかったのかを調べてみた。

インバウンドの波、今や活況

軒数を知るため、旅館業法を管掌する厚生労働省の統計を調べたが、カプセルホテルに限った統計は存在しないことが分かった。タウンページデータベースによると、2016年3月末時点で大阪府の軒数は9。東京都(60軒)や神奈川県(15軒)と比べて少ないだけでなく、福岡県(11軒)にも及ばない。「じゃらんネット」など大手ホテル予約サイトで確認できる宿泊プランも東京の40件超に対して大阪は10件前後。やはり軒数は少ないようだ。

なぜか。ホテル評論家の滝沢信秋さんは「大阪ではビジネスホテルに対する価格優位性が低かった」と指摘する。現在は訪日外国人客の増加で、大阪で1泊2万円を超すビジネスホテルもある。ただ訪日客が増える前は4千~5千円で泊まれる場合も多く、3千円台のカプセルホテルを選ぶ優位性が低かったわけだ。

タクシーで帰宅しやすいのも一因だ。業界推計でカプセルホテル1泊の平均価格は約3500円。タクシーで梅田から北上すれば北大阪急行緑地公園駅周辺まで行ける。「5千円超分5割引き」など「日本一安い」ともいわれるタクシーの運賃割引制度はカプセルホテルには難敵だ。

大阪の経済的地盤沈下も関係しているようだ。関西の文化に詳しい相愛大学(大阪市)の前垣和義客員教授によると高度経済成長期以降、大阪本社の企業がこぞって東京に本社機能を移転。大阪での仕事がかつてほど忙しくなくなり、終電前に帰宅する人が増えた。「経費の決裁権が東京に移って大阪の財布のひもがきつくなり、遅くまで接待することも減った」(前垣氏)ので、需要が東京ほど伸びなかったという分析だ。

1979年、日本初として梅田で開いたカプセル・イン大阪

おぼろげに輪郭が見えてきたなかで、さっと霧が晴れる話が聞けた。カプセルホテル用ベッド製造最大手、コトブキシーティング(東京・千代田)の中村千明部長は「第1号ゆえの厳格な設置指導基準」こそが大阪でカプセルホテルが広がらなかった最大の理由だと教えてくれた。

カプセルホテルは旅館業法の「簡易宿所」で規定するが、設置に関しては自治体ごとに指導基準が違う。カプセルに関しては東京都では「素材」と「スプリンクラー」など3項目だけだが、大阪市は「カプセルの大きさ」や「出入り口の面積」「照明の明るさ」など10項目にも及ぶ。カプセルホテルは他のホテルより初期投資が少ないため個人経営者も多いが、大阪では厳しい基準をクリアできず新規参入が増えなかったのだ。

コトブキシーティングが2014年に発売したカプセル型ベッドは室内奥の間接照明などで高級感を演出している

納得感に浸っていると、コトブキシーティングの白石浩二課長が「今最もカプセルホテル市場が活況なのは実は関西」と笑う。開業の問い合わせや実際の契約率は東京の約2倍。ニュージャパン観光の難波の施設は予約の4割が訪日客だ。訪日客と「ビジネスホテルが取れなかったサラリーマンの利用が増えている」(広報宣伝室の渡辺大氏)。

全盛期に全国500軒程度あったカプセルホテルは一時約200軒まで減った。最近約250軒まで回復し、女性向けや5千円を超える高級タイプも人気だ。話題の最先端として今度泊まってみよう。

(大阪経済部 大淵将一)

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