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商都地底に秘密の100キロ NTT西の洞道(未来への百景)

大阪市

オフィスビルが立ち並ぶ大阪市中心部の地下16メートルに地図には載らない秘密のトンネルがある。直径3メートルほどのこの空間は「洞道(とうどう)」と呼ばれるNTT西日本所有のトンネル。側面に張り巡らされた管は交換局をつなぐ通信ケーブルだ。

洞道は市街地を取り囲むように幾重にも張り巡らされ、総延長は大阪市内だけで約100キロメートルに及ぶ。市外は電線や水道管などと共用の共同溝の中にケーブルを通し、周辺の主要都市とつながっている。

洞道が地下深くを通るのは、配管工事などの影響を受けないためだ。地下鉄や水道管より深い場所に造られることが多く、地下鉄の新路線に引っかかる場合はより深くに移設することもある。淀川の下を走る洞道は地表から約40メートル(13階建てのビルに相当)の深さ。年間を通して中の気温はセ氏18~20度で安定しており、地下まで階段を下りるときにかいた汗もさっと引く。

NTTの前身の日本電信電話公社が洞道の建設を本格的に始めたのは1971年。当時は多くのケーブルを直径約10センチメートルのパイプに収容し埋設していたため、電話回線が増えたり故障したりするたびに道路を掘り返す必要があった。ケーブルの集中する大都市部に人が出入りできる洞道を造れば、工事の手間を減らせる。

「洞道は防災面でも重要です」とNTTインフラネット洞道支援担当の脇行利さんは指摘する。電柱にケーブルをはわせると、落下物で断線する危険性がある。一方、洞道は震度7に耐えられる構造で、95年の阪神大震災でもほぼ無傷だったという。

光ファイバーの普及に伴い、最近では洞道の新設は無くなった。直径7センチメートルの銅線の束4~5本分を、直径数センチメートルの光ファイバーの束1本に置き換えられるため、設備に余裕が生まれたためだ。

IT(情報技術)が進化すれば有線の通信網は不要になるかと思いきや、「携帯電話のデータ通信などもこのケーブルを通る」とNTTインフラネット西日本センタ所長の奥野正富さん。電波を使うのは基地局と端末の間だけで、基地局間のデータのやり取りは有線を頼る。家庭やオフィスの固定電話も、電柱や地中の小さなパイプを通り、洞道につながっている。モバイル通信全盛の今も、洞道は情報化社会を支える大動脈なのだ。

文 花田幸典

写真 浦田晃之介

<取材手帳から> 洞道に入ると、意外にも清潔なことに驚いた。地下トンネルと聞いて汚れた場所をイメージしていたが、ほとんど人が入らず、食料になるものが無ければ、ネズミなどが入り込むことも無いのだろう。
 光ファイバーの普及でケーブルが細くなり、洞道内には余裕がある。大阪の中心部にこの空間はもったいないと思い聞くと、洞道の活用法として、ワインの貯蔵やキノコの栽培、貸金庫、非常用物資の保管などのアイデアが挙がっているという。法律の問題ですぐには実現しないだろうが、情報が行き交うケーブルの横で育ったキノコが食卓に並ぶ日がくるかもしれない。

<カメラマン余話> トンネルには、数百メートル続くストレートとカーブが入り交じる。直線部分では左右対称のスタイリッシュな構図を期待できるが、巨大生物の器官に入り込んだような感覚を表そうと、蛇行部分を狙う。作業員の動きを出すため、20秒のスローシャッターで撮影した。

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