起業文化、土台強固に 成長支援へ官民で仕組み

2017/6/20 2:30
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関西で官民を挙げてベンチャー企業を支援する機運が高まっている。大阪市は2013年にJR大阪駅前の商業施設「グランフロント大阪」内に起業家を創出する拠点を開設。4年が過ぎ、起業家養成プログラムへの参加企業も増えつつある。首都圏に偏りがちだった起業の機運を関西から盛り上げようと、地元企業も支援に乗り出した。

大阪市は国内外の起業家を集めたイベントを開催した(ハック・オオサカ2017)

2月。グランフロント大阪のホールに国内外の起業家など約700人が集まった。2013年から大阪市が主催する国際イノベーション会議「Hack Osaka(ハック・オオサカ)」だ。関西から起業家を輩出し、まちぐるみで支援するイベントとして参加企業が増えている。

大阪市は13年にグランフロント内の産学連携拠点の一角に「大阪イノベーションハブ」を開設。IT(情報技術)のエンジニアやデザイナーらを集めたソフト開発のイベントを開いたり、海外から著名な起業家を招いたりして新ビジネスの創出を狙う。経営や会計など多分野の専門家が組んでベンチャー企業を成長軌道に乗せる狙いだ。

米国では既にこうした仕組みがあり、ベンチャーキャピタル(VC)が主導して有望なベンチャーを後押ししているが、日本は支援体制が十分ではない。自治体が中心になって取り組む新しい起業家支援の仕組みを関西から創出する。

その先駆けとなるのが、16年から大阪市が始めた創業5年以内のベンチャー企業を支援するプログラムだ。監査法人トーマツが事業を受託して年2回開催する。このほど3期目の参加企業10社が決定。プログラムには法律や金融の専門家や大企業の担当者が参加し、協業の提案などもできる。

神戸市も昨年、米有力VC「500スタートアップス」のベンチャー企業育成プログラムを国内で初めて誘致した。実践に重点を置いた内容でVCから資金調達する戦略作りなどを教えている。

これまで関西で起業しても支援する仕組みが整っておらず、東京などにベンチャー企業が流出していた。事態を打開しようと官民を挙げての取り組みが進む。

鉄道会社も存在感を示している。JR西日本は16年にベンチャー投資子会社「JR西日本イノベーションズ」を設立。30億円の投資枠を設けて全額を出資する。阪急電鉄など私鉄大手がベンチャー投資を手掛けているが、専門会社を立ち上げたのはJR西日本が初めて。沿線で人口減少が進むなか、ベンチャー企業への投資を通じて雇用拡大や地域の活性化につなげる。

国立大発VC、長い目で投資

大阪大学や京都大学など関西の国立大学が研究成果を活用したベンチャー企業の支援に本腰を入れている。2014年に阪大がベンチャーキャピタル(VC)を設立、京大のVCも16年に始動した。民間のVCのように短期間の投資効率にこだわらず、バイオ分野など長期間の研究が必要な分野で事業化を支援する。

電子レンジに使われる身近な「マイクロ波」を応用して食料品や化学製品を効率的に製造するマイクロ波化学(大阪府吹田市)。元商社マンの吉野巌社長と阪大の特任准教授だった塚原保徳取締役が起業した。同社の技術を活用すれば、熱伝導を使った技術に比べてエネルギー使用量は3分の1で済む。化学プラントの製造工程を変える可能性を秘めている。15年秋には大阪大学ベンチャーキャピタルから3億円の出資を受けており、量産施設を増設して事業を拡大する。

阪大のVCは政府が総額1000億円の出資資金を提供した国立4大学で最初のVCだ。投資先は阪大と企業との共同研究の成果をもとに起業した技術系ベンチャー企業などだ。マイクロ波化学は初の投資案件となった。阪大は再生医療や微生物学などの分野で強みを持つ。研究者との情報交換を通じて最先端の技術を持つベンチャー育成を目指す。

京大も16年1月、160億円の大型ベンチャーファンドを組成した。現時点では国立大学で最高額となる。資金を元手に大学発ベンチャーを長期にわたって支援する。京大はiPS細胞などバイオ分野に強いが、事業化には時間がかかる。このため民間ファンドではリスクが取りにくい案件もある。京大発VCは運用期間を15年と民間や他大学のファンドよりも長く設定して研究成果を事業化に導くほか、民間ファンドとも連携する。

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