車いすの目線でマナー検定(次代の創造手)
ミライロ社長 垣内俊哉さん(26)

2015/9/3付
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■「障害から得られる学びもある」 気付きがもたらす集客力

だれもが使いやすいユニバーサルデザインのコンサルティングを手掛けるミライロ(大阪市)の垣内俊哉社長は車いすを走らせながら「バリアバリュー」の考え方を説く。社会貢献のみでとらえがちなバリアフリーから一歩進み、障害(バリアー)が個人のバリュー(価値)となり企業の利益を生み出す世界を目指す。

◎  ◎

ミライロが8月上旬、京都市で開いた「ユニバーサルマナー検定」。飲食店で片手にトレーを持つ車いすの女性客を垣内がスライドで示し、困っている点や改善策を問いかけた。約70人の参加者からは「だれかにトレーを持ってほしいだろうけど気を使うよね」「カバンを下に置かれたら車いすで通りにくく困るだろう」といった意見が出た。

ユニバーサルマナー検定で障害を感じている人への接し方などを説明する垣内さん(京都市下京区)

ユニバーサルマナー検定で障害を感じている人への接し方などを説明する垣内さん(京都市下京区)

検定は講義や筆記試験、実技研修を通じ、障害を感じる人への接客や心構えを「だれもが身につけて当然なマナーとして学んでもらう」(垣内)。内容は医師らをアドバイザーに迎えて設立したユニバーサルマナー協会で練る。参加したホテル従業員の橋本奈々(23)は「道で困っている人に声をかける勇気を持ちたいと思った」と話す。検定には2013年夏以降、累計約7千人が参加した。

垣内は幼少時に骨が弱く折れやすい「骨形成不全症」を患い、車いすを使ってきた。高校時代にリハビリしつつ猛勉強して立命館大学に合格。「歩けないからできることは何か」と考え、大学で出会った現副社長の民野剛郎らと09年、ミライロの前身となる学生団体を立ち上げた。その後、ホテルや結婚式場向けにユニバーサルデザインのコンサルティングや研修を手掛けてきた。

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2年前、手術後の容体が悪化して3日間昏睡(こんすい)状態に陥った。目が覚めた時、生まれて初めて父の泣き顔を見る。折しも入院中、会社の業績は悪化していた。「自分が居なくても会社として回る仕組みをつくらねばならない」。個別企業ごとに内容を変えていたユニバーサルマナー研修の内容をマニュアル化し、13年から検定に刷新。講師育成にも力を入れ、継続可能な事業モデルを強く意識するようになった。

「障害はない方がよいが障害があることで得られるチャンスや学びもある」。垣内は車いすの目線から得た学びや気付きが社会貢献だけでなく、会社の集客力や顧客満足度の向上につながると訴える。障害を感じる人と向き合う意識があっても「企業の利益に結びつかなければ長続きしない」。そんな思いから様々な企業に協業を呼びかける。

10月には旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)と組み、ハワイでバリアフリーの先進事例を学ぶツアーを催す。現地の人との夕食会、ビーチ用車いすのワイキキ観光を取り入れたユニークな内容が受け、ケアマネジャーや学生、高齢者ら幅広い層の申し込みがあるという。「新たな顧客を開拓できる」とHISバリアフリートラベルデスクの薄井貴之所長は期待する。

大勢の外国人が訪れる20年の東京五輪はバリアバリューを広める好機になり得る。パラリンピックの選手村や交通機関、運営でも提言を求められている垣内は「日本が世界のお手本となっていればうれしい」と目を輝かせる。

=敬称略

(大阪経済部 西岡杏)

<ばっくぼーん>人の役に立つ喜び、土台に
 昔から物作りをする機会が多かったです。学生のときは夏休みの課題として岐阜県の展覧会に工作物を出品しました。通学に1時間以上かかる山奥に住んでいたため、雪や砂利道でも移動できるよう、車いすの前輪にスキー板をつけたのです。珍しいと評価され、世界の若者の発明に贈られる賞を受けました。自分の視点が人の役に立つのだと思い、うれしくなりました。
 小学校のときに運動会のリレーで皆と同じ舞台に立てず歯がゆい思いをするなど悔しい経験もありました。けれども反骨精神だけではなく、何かが人のためになると実感できたことが現在の事業の大きなエネルギーになっているのだと思います。
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