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ビル街潤す段々畑 なんばパークス(未来への百景)

大阪市

南海電気鉄道の難波駅に通じる連絡通路から見上げるとビルの谷間にこんもりと木々が生い茂る。段々畑に似た緑の光景は里山に迷い込んだのかと錯覚しそうだ。ミナミを代表する商業施設、なんばパークスの屋上庭園。都会のオアシスとして訪れる者に一服の清涼感を与えてくれる。

なんばパークスは2~9階が段丘状で、屋上の約半分の5300平方メートルを約500種、10万株の緑が覆う。草花や芝生、低木類が多い一般的な屋上庭園に比べ、ヤマボウシやネムノキなど背の高い木々が多い。9~10メートルの高さに育ったハナミズキもあり、森のような雰囲気を醸し出す。

「子供が触れても安全なように」(パークスガーデン事務局統括責任者の西塙征広さん)植物は化学肥料や農薬を使わず手入れする。ガや毛虫は8人のスタッフが手作業で取り除く。営業時間中に植え替えや枝切りをするのは来店客とのコミュニケーションのきっかけにするためだ。「常連客から植物の栽培方法について相談を受けることもある」(西塙さん)

なんばパークスの開業は2003年。旧南海ホークスの本拠地、大阪球場の跡地再開発にあたり「緑のある憩いの場がほしい」という周辺住民の要望に応えて屋上庭園をつくった。段丘状で特徴を出すとともに、どのフロアからも庭園にアクセスでき、各階のレストランで緑を楽しみながら食事できるようにした。

屋上緑化は商業施設にも好影響を及ぼしている。ひとつはヒートアイランド対策。04年の調査によると、真夏のピーク時には緑化した部分の表面温度が緑化していない部分より16~23度低かった。買い物の合間に庭園で休めるため「カップルや家族連れの施設滞在時間が長くなる効果がある」(南海電気鉄道の村井寛明なんばパークス主任)。

休日には遊戯具のあるエリアで遊んだり、植物観察や昆虫採集を楽しんだりする親子らも。今年3月のリニューアルでは子供服のミキハウスなど子供向けの店を誘致した。

東京に比べても緑が少ないといわれる大阪。第1期開業から12年たったなんばパークスの木々は大きく育ち、緑は深くなった。珍しい昆虫や小鳥も訪れるようになり、大阪府のレッドリストに掲載されているコサメビタキ、センダイムシクイといった野鳥も観察された。14年には米CNNの「世界で最も美しい空中庭園」に認定され、外国人観光客の目も楽しませている。

文 小国由美子

写真 三村幸作

〈取材手帳から〉 なんばパークスの屋上庭園はエリアごとにテーマがあり、散策すると様々な表情を楽しめる。「温暖化の影響か、グレビレアやカリステモン、ジャカランダなど亜熱帯の植物が花を付けるようになった」(パークスガーデン事務局の西塙征広さん)。大阪にいながら南国気分も味わえる。
 カキツバタやショウブ、ハスなど、通常は池に植えられていて遠くからしか見られない水生植物を手で触れるほどの至近距離で見ることができるのは人工の庭園ならではだ。平日の午後2時からはガイドツアーを実施しているので、興味のある人は参加してみるといいだろう。

〈カメラマン余話〉 広い敷地をくまなく歩き、造形の面白さと開放感が際立つ空間を見つけた。カメラを構えると、樹木で羽を休める鳥のさえずりが心を和ませる。ファインダーの中にふと、親子連れが現れた。眺めに夢中な子供の影が、穏やかなひとときを伝えるアクセントになった。

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