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「なにわの食文化」支える 「魚の庭」大阪湾(1)
軌跡

2015/7/28付
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「大阪でもおいしい水産物がたくさん水揚げされていることをぜひ知ってほしい」。6月27日、大阪市中央卸売市場と安治川をはさんで向かい合う産直海鮮市場「中之島漁港」(大阪市西区)。松井一郎・大阪府知事が高級魚キジハタや泉だこなど、大阪湾の海産物を売り込んだ。

大阪湾の魚介類は地元より他地域で評判が高いという。脂が乗ったマイワシは東京・築地や九州へ。アナゴ、コノシロ(コハダ)、ちりめんじゃこも高い評価を受ける。

広辞苑で「なにわ」を引くと「一説に魚庭(なにわ)の意という」と出てくる。淀川や大和川から多くの栄養分が流れ込む大阪湾は古来、豊かな漁場だった。今も兵庫県側を含め年3万トンほどの漁獲量があるとみられる。面積で約3分の2の東京湾内湾は試算で1万トン程度。大阪湾の単位面積当たり漁獲高は今も全国トップクラスといえる。

大阪府立環境農林水産総合研究所水産技術センター(岬町)の日下部敬之・水産研究部長に大阪湾漁業の歴史と特徴を尋ねた。穏やかな内湾では古くから漁業が発達し、弥生時代の池上曽根遺跡(大阪府和泉市、泉大津市)からはイイダコを取ったとみられるつぼ型土器が出土する。

消費地に近く、技術も進んで漁業集落が形成された。江戸初期に泉州の漁師が房総半島へイワシ漁の出稼ぎに行き技術を伝えたと記す古文書が残る。佃(大阪市西淀川区)の漁民が江戸に移住し東京湾で漁業を行ったのも有名な話だ。「大阪湾がなにわの食文化が発展する基礎を作った」と日下部部長は語る。

大阪湾漁業の特徴は魚種が非常に多い「瀬戸内海型漁業」だ。漁獲対象は200種類という調査もある。だが1983年に大阪府だけで78億円あった漁獲金額は2013年で31億円に。漁獲量の減少と消費者の魚離れによる魚価の低迷が響いている。

環境の変化が漁業に大きな影響を与えてきた。まず高度経済成長期を中心に、魚介類の産卵や生育の場で、水質浄化作用もある藻場や干潟が埋め立てにより激減した。

これに水質汚濁が追い打ちをかける。70年前後には工場廃水による重金属など有害物質が魚にダメージを与えた。規制により有害物質の影響は低下したが、今度は工場や生活排水に由来する窒素やリンによる有機汚濁が進み、赤潮被害が起きた。70~80年代が富栄養化による環境悪化のピークである。

国は大阪湾を含む瀬戸内海でのリン排出規制を定めた瀬戸内海環境保全特別措置法を78年に改正施行。水質汚濁防止法で窒素やリンの総量規制も実施した。下水道整備や下水処理技術の高度化で90年代に有機汚濁は急速に改善し海の透明度も高まったのに漁獲量は落ち込んでいく。何が起きたのか?

編集委員 宮内禎一が担当します。

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