リーグ底上げへ「二足のシューズ」(次代の創造手)
女子プロ野球選手兼コーチ 小西美加さん(32)

2015/5/28付
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■「技量示しリピーター客増やす」 ローテ支えつつ指導にも力

創設から6年目を迎えた日本女子プロ野球リーグ(JWBL)。京都フローラ所属の小西美加は初年度から本格右腕投手として活躍し、リーグ最多の通算48勝(25日現在)を挙げてきた。昨春からはコーチも兼任。女子野球のパイオニアは、リーグの底上げを図ろうと"二足のスパイクシューズ"を履いて奮闘中だ。

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「京都フローラ」で本格右腕投手として活躍を続ける小西さん

「京都フローラ」で本格右腕投手として活躍を続ける小西さん

フローラが本拠地の1つとする伏見桃山城運動公園野球場(京都市伏見区)。ブルペンで投げ込む小西の姿がある。右上手からの直球は球速120キロ。5種の変化球も投げ分ける。リーグ最年長選手となって久しいが、先発ローテの一角をいまも譲らない。

小西はまた、大谷翔平(日本ハム)と同じ「二刀流」であり、スラッガーとして4年前にリーグ第1号本塁打を放っている。女子は重さ830グラムほどの中学生用の金属バットを使う選手が大半だが、高校球児と同じ硬式一般用の910グラムを振り回す小西には「飛距離ではまだ若手に負けない」という自負がある。

小学2年生の冬、兄の影響で野球を始めた。高校、短大では硬式野球を続ける環境がなく、ソフトボールへ転向。全国3位の成績を残したが、野球への思いは断ちがたく、高校時代は「下からは投げません」と投手を拒否して肩を鍛えるため中堅手となった。そんな来歴だから、「できるはずない」とずっと思っていた女子プロリーグ結成を知ったときの驚きと喜びはひとしおだった。

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リーグ誕生後、全国で5校だけだった高校の女子硬式野球部は19校に。高校生を教える元選手も増えた。JWBLという頂上をまずつくり、そこから裾野を広げるやり方は一定の成果を上げている。小西が指導にあたるフローラの野球教室でも女児の姿が目立ち、「将来の夢は女子プロ野球選手」と答える子が増えたことに喜びも感じる。

だが4チームから成るリーグの基盤は脆弱で、1試合の観客動員は4年前のピークでも1700人ほど。チームの入れ替えや再編が頻発、その波にもまれて小西も関西3チームを渡り歩いてきた。この先ユニホームを脱いでも、指導者の卵として、女子野球の顔として、パイオニアの負う荷が軽くなるものではない。

本人にも、この小さな世界を大きくしたい思いがある。東京五輪で復帰を目指す男子の野球、女子のソフトと同様に「女子野球も五輪に」と願う。8カ国・地域にとどまるW杯の参加チームも増やしたい。「いつかフランスやイタリアなどのサッカー大国にも教えに行こう」とも考える。

女性ならではの柔軟な体を生かす小西流のコーチ像も模索中。「でもまだまだです。アドバイスを求められたら応じるくらい」

自分の持つ球速126キロのリーグ記録を破る者はまだいない。コーチ兼任といってもマウンドを譲るつもりはない。「女子は30歳を超えると衰えが……」。現場でささやかれる風説をただの偏見にしたい。「女子でもやれるという技量を示さないとリピーターのお客さんも増えないと思うし」。指導も普及活動も本腰を入れるのはもう少し先。今はまだ自分が「頂」であり続けることで裾野は広がると信じている。=敬称略

(大阪・運動担当 常広文太)

<ばっくぼーん>試合できない寂しさ痛感
 中学生になって、硬式野球がやりたくて地元のボーイズリーグのチームに練習生扱いで入団しました。女子だから公式戦に出られません。学校では陸上部で基礎体力を鍛えました。高校進学時も、女子野球部があったのは鹿児島県の神村学園だけ。硬球でプレーする環境は京都の実家近くにありませんでした。
 働きながらクラブチームで5年以上プレーした経験から「毎日野球の練習ができるのは男子だけ」とずっと思っていました。だから、ようやく誕生した女子リーグを盛り上げるのはプロ1期生としての役割だと思うんです。そうすれば、私みたいな寂しい経験をする子がいなくなりますから。
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