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もっと関西 「モータープール」知ってますか(とことんサーチ)
「駐車場」の意味 若者に通じず? 高度成長期 関西でブーム

2017/7/22 6:00
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大阪で目につく「モータープール」の看板。当初は車が水に浮いている巨大な洗車場だと思っていたが、実は単なる「駐車場」。ただこの言葉は関西以外ではあまり見かけず、日常会話で聞いたためしがない。モータープールの謎に迫った。

タクシーの運転手に尋ねた。「モータープールって関西の言葉ですか?」。大阪に住んで約50年という九州出身の運転手は「当初大阪にはプールがたくさんあるんだと思ってましたよ」と笑った。「確かに、関西以外では聞いたことがない言葉ですなあ」

実際、駐車場だと分かる人はどの程度いるのか。JR大阪駅など街頭で約50人に聞いてみた。「え、関西特有の言葉なの?普通に使いますけど」。大阪市に住む主婦(60)は標準語だと思っていた。50代以下では反応に変化が。奈良市出身の50代男性は「意味は分かるけど、最近見かけないね」。20代以下だと「聞いたことありません。それ、なんですか?」。大阪育ちで就職活動中の大学生は答えた。

地域差はあるのか。業界団体にあたったが分布データは見当たらない。そこで電話帳「タウンページ」で探してみた。駐車場と駐車場(月極)に分類されている事業者でモータープールと表記があるものを数えた。大阪市の駐車場はざっと480カ所で、モータープールは約4割。特に月極駐車場に多いようだ。大阪府全体では35%だった。ただ同じ関西でも奈良県は5割近いのに、京都府はわずか5%。兵庫以西も調べたが、圧倒的に数が少ない。大阪を中心とした関西で使うようだ。

以前取材中にモータープールの看板を多く見かけた大阪府茨木市に向かった。JR茨木駅から500メートル圏内の住宅街を歩くと約100メートルおきに看板が現れた。レトロな看板が目印の「駅前モータープール」を営む西村悟志さん(40)は「この辺りは昔から住んでいる人が多く、家業で駐車場をやっている」と話す。西村さんの駐車場も創業60年以上。周辺には住宅の車庫を使って運営する業者もあった。

大阪市や奈良市でも聞き取りをすると、共通点が浮かび上がった。昭和30年代に創業していることだ。天神橋筋商店街に近い与力モータープール(大阪市北区)は「昔はガラスを商売にしていたが、昭和30年ごろから駐車場を始めた」。北区はかつてガラスメーカーが多かったが、業者が減るとともに駐車場に転換した事例が多いようだ。「昔は墨をつくっていた」とは金子モータープール(奈良市)の担当者。奈良県では寺に関係した事業から駐車場に転換した業者が多いとみられる。

梅花女子大学の米川明彦教授(62)によると、モータープールはもともと戦後の東京で米国の進駐軍が車置き場として使った用語だという。米川さんの地図資料では戦後の東京駅前にはモータープールの表記がたくさんあった。東京では米軍のイメージが強く多用されなかったようだ。

大阪で初めて言葉が登場したのは昭和28年(1953年)の大阪第一生命ビルディング建築工事。別の資料に「大阪初のモータープールを設置」とある。その後市内に10カ所以上できたとか。ただ「東京で使われた軍用語がなぜ関西に定着したかはわからない」(米川さん)。新しもの好きの大阪で高度経済成長期に独自に進化した「ベンチャー用語」だったのかもしれない。

そんな関西ことばも時代の流れには逆らえない。取材中、地図にモータープールとあってもコインパーキングに変わっている現場にしばしば遭遇した。少子高齢化で車の所有台数が減り、若い世代はカーシェアリングも日常的。月極駐車場が減るなかでモータープールの看板も減りつつある。20代の多くが「知らない」と答えるのもうなずける。どの都市でも見る駐車場チェーンの看板に変わるのは少し寂しい。関西ならではの風景として長く残ってほしいと願う。

(大阪経済部 川上梓)

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