戴社長「シャープ主導なら自信ある」 Jディスプレイ再建
シャープは10日、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下入り約1年を機に記者会見を開いた。戴正呉社長は「人員削減もせず、社員の満足感もあがっている」と成果を強調した。経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)をめぐっては「シャープが主導するなら(立て直しに)自信がある」と話した。独占禁止法の問題もあり合併や直接出資はできないが、「色々な方法がある」として、支援に前向きな姿勢を示した。

この日記者会見が行われたのは社長室。部屋には戴社長が度々言及する同社の「経営信条」と「経営理念」が掲げられていた。机と椅子、大型ディスプレーがずらりと並んでおり、普段から各地の事業所との会議に使っているという。パーテーションで仕切られた業務用の机の上にはモノが少なく、すっきりとした印象だった。
冒頭数分の戴社長のあいさつのあとには、各幹部から1年を振り返る説明が30分ほど続いた。イントラネット経由で匿名で調べたという社員アンケートを引き合いに出し、1年前に比べて会社としての目標が明確である点や経営のスピードが高く評価されていると力説。アンケートによるとコスト意識や仕事のスピードなども高まったと答える割合が多く、社員の意識が変わっていると説明した。
その後の質疑応答もなごやかに進んだが、戴社長が声を荒らげたのがJDIへの支援について問われた時だった。「日本は世界の中で強い国でしょ。ディスプレーだけ負ける? 恥ずかしい!」。JDIが中国の液晶メーカーに支援を要請しているという報道に敏感に反応したようだった。「(台湾の)鴻海が恐れているのはパネルの技術が中国に流出することだ」とも語った。
戴社長は常々、シャープやJDIが技術面で手を組み、"日の丸連合"を結成して中国や韓国メーカーに対抗すべきだとの認識を示してきた。今日の記者会見では「装置や素材メーカーも巻き込み、大日の丸連合をつくるべきだ」とも主張し、「シャープがリードできるならば(立て直しに)自信がある。黒字化もできる」と語った。
その自信の根拠としてこの1年の構造改革の成果を再度説明。人員削減をせずに経営を立て直した点を強調するため、テレビ会議を通じて出席していた液晶事業担当の幹部に、三重県亀山市の液晶工場で人員が増えている様子を説明させたほか、事業拠点の見直しで単身赴任社員が家族と住めるようになり感謝しているエピソードなどを披露した。技術流出についても液晶事業担当の幹部の「していない。むしろ技術が進歩して工場の稼働もあがっている」という言葉を借りて否定した。
シャープでの立て直しの手法はJDIにも活用できる面がありそうだが、独占禁止法の問題があり両社の合併などはできそうにない。戴社長は「色々な方法がある。すでに私のアタマの中にある」と含みを持たせた。
(香月夏子)
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