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もっと関西 西の線香花火 東と違う風情(とことんサーチ)
上から持つか?下から持つか? マッチ棒形で華やか わらで軸、最近は希少

2017/8/15 17:00
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お盆休みに家族や友人と手持ちの花火を楽しむ人も多いだろう。実は線香花火にも関西と関東で違いがあるという。関東出身の記者はこよりが付いた紙製の線香花火がなじみ深いが、関西ではどうやら茶色のマッチ棒のような花火が線香花火だという。違いや由来を調べるため、花火商店や花火メーカーを訪ねてみた。

関西(右)と関東の線香花火(大阪府吹田市)

関西(右)と関東の線香花火(大阪府吹田市)

「西の線香花火はスボ手牡丹(ぼたん)やね」と教えてくれたのは、大阪市内の有名問屋街である松屋町にある三木直商店の三木啓二さんだ。線香花火は東西で、形だけでなく名前も違うと教えてくれた。線香花火は燃える時の姿から牡丹とも呼ばれるが、西では「スボ手」、東では「長手」という修飾語がつく。

スボは稲わらの芯を意味する「わらすぼ(わらしべ)」のことで、その名の通り西の線香花火は軸にわらを使っている。一方の「長手牡丹」は、長い和紙を手でよる様子からついたという説がある。

持ち方も違う。スボ手が火のついた側を上に斜め45度程度の角度で持って遊ぶのに対し、長手はこよりを持って火のついたほうを下に垂らす。

いつ西と東で線香花火は生まれたのか。ルーツを探るため全国の花火製造・販売業者らでつくる日本煙火協会(東京・中央)に話を聞きに行った。河野晴行専務理事は「花火は江戸時代に普及した」と語る。戦国時代には武器として使われていた火薬も、平和な江戸時代では花火という大衆の娯楽に姿を変えた。

西の線香花火も江戸時代に生まれたようだ。江戸時代前期~中期に京都で活躍した浮世絵師、西川祐信作の「絵本常盤草」では女性が香炉に立てた花火を眺めている様子が描かれている。「香炉に花火を立てる様子から『線香花火』と呼ばれ始めた」と河野さんは解説してくれた。

では、いつから西と東でスボ手と長手に別れたのか。国内で唯一、今も西と東の線香花火を作っている筒井時正玩具花火製造所(福岡県みやま市)に話を聞きに行った。

「確かなことはわからないが」と筒井良太さんは前置きしつつ、「もともと稲作が盛んだった関西では、わらを使ったスボ手が生まれたのではないか」と説明してくれた。その後関東に伝わった際に、関西ほどわらが無く紙すきが盛んだったため、わらの代用として紙が使われるようになった可能性があるという。

一方、東の方が先ではないかという意見もある。前述の説はあくまで一つの考え方だが、西から東に伝わったと考える方がしっくりくる気がする。ただ、線香花火を取り巻く状況は変わりつつある。

8月上旬、大阪府吹田市の万博記念公園に足を運んだ。期間限定で園内で手持ち花火を楽しめるとあって、家族連れやカップルでにぎわっていた。「西と東で線香花火って違うの知っていますか」と声をかけると、20代の男女は「知らなかった」と驚いた様子。記者と同じように長手を線香花火だと認識していた。

50代男性は「子供の頃はスボ手で遊んでいた」といい、若い世代にはスボ手のなじみが薄くなっているようだ。長手は色つきの和紙を使い、見た目が華やかなこともあって商業的に成功し、西でも広まったと考えられる。さらには、スボ手の製造方法にも一因がありそうだ。

「わらを手に入れるのに苦労している」と筒井さんは話す。実は筒井さんは、自分でコメを育てて残りの稲わらをスボ手の材料にしている。以前は外部から購入していたが、わらぼうきなども少なくなって用途が減り、今では外部調達が難しいのだ。

加えてスボ手は火薬にニカワを混ぜるため、腐りやすい夏には製造できない。こうした製造上の難しさから、中国メーカーも長手のようには手掛けず、目にする機会が減ったのではないだろうか。

スボ手は見た目は地味だが、パチパチとはじけて燃える様子はとても華やかだ。残暑が続きそうな今夏。東西の花火を手に違いを楽しんでみるのも一興かもしれない。

(大阪経済部 香月夏子)

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