鯖や、養殖業参入 未利用魚を餌に・ドローン船活用
離島周辺 外販も狙う

2017/9/12 2:00
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サバ料理専門店の鯖や(大阪府豊中市)は、2018年度内に新技術を使ったサバなどの養殖事業に参入する。小型で値段がつかない「未利用魚」を使った餌を「ドローン船」と呼ぶ船形の無人機でまく。餌代が安く、人手も少ないため低コストで養殖できるのが特長。養殖魚は自社の料理店などに出荷する。川上から川下まで一貫して手掛けることでもうかる養殖業モデルの確立を目指す。

鯖やは国内外でサバ料理専門店「SABAR」など13店舗を営み、全国各地の漁場と組んで新鮮な天然サバを年間約300トン仕入れている。ただ漁業の担い手は10年余りで3割減少。福井県小浜市などサバ産地での漁獲量も大きく減るなか、食材の安定確保に加え「高品質のサバを調達できる仕組みが必要」(右田孝宣社長)と判断した。

国内ではまだ少ないサバの養殖を本格的に手掛けるため、7月に養殖業専門の新会社「クラウド漁業」(豊中市)を設立した。資本金の300万円は右田社長が全額出資した。山陰地方の離島周辺でまず300匹でサバの養殖を始め、20年5月の初出荷を目指す。

サバ料理専門店「SABAR」などで売り出す(大阪市)

サバ料理専門店「SABAR」などで売り出す(大阪市)

まずは18年5月に、離島周辺でとれた未利用魚を餌にする取り組みから始める。外食業で取引のある漁業協同組合などから定置網にかかった小型のカタクチイワシやトビウオなどを低価格で仕入れ、離島周辺のいけすで餌にする。

未利用魚の漁獲量は年間約270万トンと国内で流通する魚の約9倍もある。輸入魚粉ではなく、通常は捨ててしまう未利用魚をその場で餌に使うため、養殖費用の7割を占める餌代が大幅に安く済み、低コストが実現できるという。

離島では餌やりに人手をかけにくいため、餌を積んだドローン船が一定間隔でいけす内を走り、自動で餌をまく。システムは企業のロボット導入を支援するゼロプラス(兵庫県伊丹市)と共同開発する。自動での餌やりは珍しく、人手や船代も抑えられる。

7月に小浜市やKDDI、公立はこだて未来大学(北海道函館市)などと立ち上げたコンソーシアムの研究内容を、自動で餌をまくドローン船の開発に役立てる。

養殖は2期目には3千匹、3期目に3万匹規模に広げる計画。離島周辺は水質がきれいで、育てたサバは離島でさばいて冷凍するため高品質を保てる。天然物の「とろさば」などと並び、メニューの幅が広がる。

魚種はサバに加え、タイやスズキなども検討する。養殖魚は自社店舗のほか、提携先の外食店などに売る。軌道に乗れば、3年以内に自治体や漁業協同組合などにノウハウを提供し、契約先を増やして事業を拡大する。

鯖やの17年4月期の売上高は前の期比33%増の12億円。新会社は22年までに売上高を34億円に伸ばし上場を狙う。この時点での新会社と鯖やの合計売上高は74億円を見込む。

■サバ一筋、大手引き付ける

「サバ一本で勝負する」――。鯖やの右田孝宣社長が掲げる個性際立つ創業理念は多くの「ファン」を引き付けてきた。

生まれも育ちも大阪の右田社長が脂がよくのった真サバ「とろさば」が看板メニューのサバ料理専門店「SABAR」を初出店したのは2014年1月。鯖寿司などサバ文化が根付く関西だけでなく、15年には東京・銀座にも進出するなど店舗網を広げてきた。

拡大の鍵となったのは不特定多数からインターネット経由で小口資金を集める「クラウドファンディング(CF)」だ。大阪福島店や東京恵比寿店など計4店の開業資金として調達。CFを通して消費者とつながり、ファンを増やしてきた。

「サバ一筋」は大手資本をも引き付ける。16年2月にはJR西日本が鯖やの第三者割当増資を引き受けた。JR西が鳥取県と共同で陸上養殖するサバ「お嬢サバ」を鯖やが仕入れて販売する。JR西の担当者は「鯖やのブランディング力や情報発信力は素晴らしい」と舌を巻く。

同年12月にはコメ卸最大手の神明からも出資を受けた。コメとサバを相互供給するほか神明がフランチャイズチェーン(FC)形式でサバを使った定食店を初出店した。

海外展開も着実に進めており、16年7月にはシンガポールの伊勢丹内に海外1号店を開業。海外展開にも余念がない。

ただ養殖業は自然相手だけに災害や病疫の発生リスクが伴う。ドローン船が有効に働く仕組みを確立できるかも重要だ。課題を克服しながら成長できるかが問われる。(大阪経済部 赤間建哉)

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