五輪選手 輝き支える関西企業 感覚を形に 信頼の道具(ひと最前線)

2016/8/11 6:00
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リオ五輪が始まった。選手の活躍を支える裏方には、最新のウエアやラケットなどの開発者たちもいる。いかに選手の力を引き出し、新記録につなげるか。開発に挑むメーカーには関西企業も多く、五輪の開幕前にひと足早く熱い闘いを繰り広げていた。

ミズノの堀田コンペティション・ライフイノベーション企画課長

ミズノの堀田コンペティション・ライフイノベーション企画課長

「是非、一緒にやりませんか」。ミズノは昨秋、リオ五輪の女子バドミントン日本代表選手の奥原希望に声をかけた。日本人で初めて世界バドミントン連盟の上位大会で優勝した選手だ。

五輪まで半年余りしかなく、「こんなに短期間で選手用のラケットを作ることはまずなかった」と、担当のコンペティション・ライフイノベーション企画課長の堀田又治(39)は振り返る。学生時代からバドミントンを趣味で続ける堀田を中心に3人で製作チームを作り、急きょ対応に乗り出した。

ラケットの試作品を複数作り、練習拠点が東京にある奥原の元に通う日々。求められたのは「軽くて柔らかい、シャトルをつかむような感覚のラケット」。シャトルを打つ際の感触などを試した奥原に「これは柔らかすぎますね」と試作品を否定され、肩を落として新大阪駅行きの新幹線に乗り込むこともあった。

「柔らかすぎる」と言われ、そのまま固いラケットを作っても選手に納得してもらえるわけではない。「スポーツ選手は感覚的に表現する。言葉をそのまま受け止めるのではなく、咀嚼(そしゃく)して受け止めることも必要」と堀田は語る。重さ、しなり具合などのバランスを調整しながら作り直していった。

アシックス次世代技術開発チームの石川さん

アシックス次世代技術開発チームの石川さん

「私の感覚に合う物になってきました」。奥原からこう連絡を受けたのは2月。楕円形のフレームの4カ所を固くし、その正方形部分のガットでシャトルを包み込むように仕上げた。3月にはミズノのラケットを使い英国での大会で優勝。100本以上の試作品を作ってたどり着いたのが、今回のリオ五輪モデルだ。

「陸上の短距離選手が少しでも速く走るために開発した」。アシックスの次世代技術開発チームの石川達也(30)は、新製品のスプリントスーツに自信を見せる。

スーツとパンツを一体化させた独自の形状。きちんと着ないと効果が出にくい製品でもあるが、100メートル9秒台の記録を持つ仏のクリストフ・ルメートル選手ら、日本を含む6カ国の選手が着用して五輪に臨む。

この製品は東レと開発した2種類の高機能素材を組み合わせ、走行中のエネルギーロスを最小化できる。採用した高伸縮性素材は従来品に比べ8割軽く、高剛性素材はゴムのように伸びても元に戻る。スタートや走行時の動きを解析したデータを基に、これらの素材を最適な部分で用いた。

石川は神戸市にあるアシックス本社の近くで生まれ育ち、同社創業者の鬼塚喜八郎が靴のデータを取るため頻繁に訪れたという高校に通っていた。大学でスポーツ工学を学び、「運命だったのかもしれない」という仕事で五輪選手を支える。

デサントで水着開発に携わる吉永さん

デサントで水着開発に携わる吉永さん

「この水着は一番薄い部分で0.2ミリメートル。国際ルールで決められている『0.8ミリメートル以上は禁止』より相当薄い」と胸を張るのが、デサントの水着開発者の吉永康裕(35)。水着は薄いほど体が動かしやすくなり「水の流れを感じられる」。大学では水泳部で主将を務めた吉永は、自らの経験を基に開発を進めた。

五輪用の水着の生地は東レと開発し、水泳選手の動作解析で名高い筑波大学とも共同研究をしてきた。極薄の生地を圧着して縫い目による水の抵抗をなくし、学生に着用感を聞くと「今までにない感じ」と称賛の声。自信を深めた。筑波大の試算では従来品と比べ速度が平均2.4%上がる。五輪では入江陵介選手らに供給した。

吉永は「元選手である自分の経験を生かし、これからも水着開発をしていきたい」と、次の東京五輪にも意欲を見せている。=敬称略

(大阪経済部 林英樹)

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