昇降1万回 演出磨く黒子 三精テクノの舞台研究棟(ここに技あり)
神戸市

2016/7/12 6:00
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高さ約30メートルの吹き抜け空間の天井からワイヤロープ6本でつった約15メートルのパイプに、100キログラムの金属製の重りが10個ぶら下がる。「マシン、動きます。アップ」と職員が叫ぶと、ワイヤロープが力強く巻き取られる。「ヒュイーン」との軽やかな音とともに、パイプと重りが秒速2メートルでするすると上昇。10秒すぎで天井に達した。

■高さビル10階分

高さ約30メートルの舞台装置の研究棟。照明などに見立てた重りをつり上げ、安全性を確認する

高さ約30メートルの舞台装置の研究棟。照明などに見立てた重りをつり上げ、安全性を確認する

舞台装置や遊戯機械の製造大手、三精テクノロジーズが神戸市北区に持つ舞台研究棟。約36億円を投じた敷地面積5万6300平方メートルの神戸事業所の開設にあわせて2008年に建設した。同社が開発した、照明装置や背景を昇降させる吊物(つりもの)装置の耐久性や動作を検証する。

実際に劇場で客席から見える舞台の高さは約7メートルだが、その上に多い場合は約50台の吊物装置を設け、照明装置や背景を昇降させる。かつて同社の生産拠点だった福知山工場の棟は約15メートルだったが、現在はビル10階分とオペラ劇場並みの大空間で検証できる。

内池善蔵・技術研究所長は「利用者が望む演出を最大限実現するため、日々工夫している」と話す。静かに素早く装置を動かすため、モーターの出力やギアの回転比率を調整。より重いものをつれるようワイヤロープの素材や編み方を変えたり、天井の滑車の素材を金属から樹脂に変えて取り付けやすくしたりと細かな改善を重ねている。

■「宝塚」にも納入

摩耗の度合いを確かめる最終テストでは1万回以上の昇降を繰り返し、200日以上を費やす。「もし故障が起きれば大事故につながり、公演が長期間休止する事態になる」(内池所長)。1年近くかけて開発した新モデルは取引先の施設に合わせて納入する。

三精テクノロジーズは1958年以降、関西の宝塚大劇場や国立文楽劇場、東京の帝国劇場や歌舞伎座など約2千の劇場やホールに舞台装置を納入してきた。今年1月開業したロームシアター京都には、ワイヤロープを巻き取るドラムを横型から縦型に変えた省スペースの装置を初納入した。

俳優の安全や効果的な演出を支える「舞台裏の黒子」。細かな演出ニーズに応えながら研究は続く。

文 大阪経済部 大西康平

写真 淡嶋健人

〈カメラマンひとこと〉照明や音響装置に見立てた重りを、何度も昇降させて安全性を検証する。観客に聞こえないようモーターの作動音は静かだが、動きは思いのほか速い。施設のスケール感と装置の動きを表現するために、下から見上げてスローシャッターで撮影した。
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