パナソニック、新型電子部品 法人事業へシフト鮮明
パナソニックは3日午後、4日に千葉県で開幕する家電・IT(情報技術)の国際見本市「シーテック」での展示を報道陣に公開した。存在感を示したのはテレビなどの家電ではなく、電子部品。握手すると連絡先が交換できる通信技術や、椅子に座るだけで室内の家電を起動できる電源のいらないスイッチなど、近未来の生活につながる新技術を公開した。会場では実演を中心に展示。新技術の使い方をわかりやすく提案して、外部の企業に共同開発を呼びかける。津賀一宏社長が号令をかける企業間取引(BtoB)シフトがここでも鮮明となった。
木目調の床や壁に暖色系でまとめたパナソニックブースは、電気製品や部品がずらりと並び無機質な印象の展示が多い会場で、ひときわ目を引いた。「(外部の企業や大学の研究・開発成果を導入する)オープンイノベーションを進めるため、入りやすい雰囲気づくりを心がけた」と担当者は説明する。
来場者の人だかりができていたのが、電圧を利用した小型通信部品のコーナーだ。体の周りに発生する電圧を使い、人が互いに触れるだけで通信できる部品を紹介する。将来は握手するだけで連絡先を交換できるなどの応用が可能だ。この部品は人と物の間でも通信できる。会場ではこの部品が仕込まれたカラフルな色付きボールを片手に持ち、反対の手で白い照明に触ると照明が同じ色に変わるショーのような展示を見せていた。
事務所のデスクをイメージしたコーナーでは、椅子に座るだけでパソコンや照明、扇風機が動く様子を展示している。押したり力を加えたりすると、自ら発電し電池がなくても動く小型スイッチの使い方の提案だ。ドアや椅子などに埋め込むことで、消費者の日常の動きが電気製品のスイッチになる。
こうした商品は2017年度~18年度にかけて発売する予定で、ウエアラブル機器や住宅メーカーなど幅広い販売先を想定している。商品化する前に展示したのは「来場者と意見交換して、外部の発想を取り込む」(担当者)ためだ。最終製品に仕立てるにあたっては、自前での開発にこだわらず、他社との共同開発も視野に入れる。
今回の展示会では開発中の技術もあえて来場者の目にさらしている。例えば、肌の調子や色合いにあわせて顔のシミを自然に隠す技術だ。カメラで撮影した顔写真から、シミの位置や大きさを検出し、医療用のシートにその人にぴったりの顔料を印刷する。
パナソニックはかつてシーテックで新型家電を続々と発表していた。電子部品への展示のシフトはパナソニックの経営の方向性と一致する。パナソニック18年度に、企業間取引(BtoB)の売上高を2兆9000億円、営業利益を2000億円とする目標を掲げている。小さな電子部品には、同社の大きな期待が詰まっている。
(香月夏子)