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揺れを熱に 命守る黒子 住友ゴムの制震ユニット(ここに技あり)

神戸市

「3、2、1、加震」。1月下旬、京都大学防災研究所(京都府宇治市)で震度7の強烈な揺れが2度発生した、2016年4月の熊本地震の再現実験を実施した。ゴゴゴゴという大きな音とともに実験台が前後左右、そして上下に激しく揺れる。実験台の上の2階建て木造家屋も併せて動く。だが不思議と、家屋自体の揺れはそれほど大きくはない。

熊本で効果証明

ひそかに揺れを抑える陰の立役者は、1階の天井から床に取り付けた細身の2本足。住友ゴム工業の住宅用制震ユニット「ミライエ」だ。鈍く黒光りしている。

前震と本震、さらに余震が繰り返された熊本地震。ミライエを装着した熊本県内の全住宅132棟で、倒壊や大きな損傷を防いで効果を証明した。京都大の再現実験でも、ミライエがない家屋では1階の天井と床が横に63センチメートルずれたが、ミライエを付けた家屋では3センチメートルにとどめた。

ミライエ内部の特殊なゴムが、地面から伝わる地震のエネルギーを熱エネルギーに変換して揺れを抑える仕組みだ。ゴム内に配合した細かいパウダー状の石同士がこすれあって発熱。震度7のエネルギーを受けると約5度上昇するという。

小型化で低価格

国内タイヤ2位の住友ゴム工業が制震ユニットを開発するきっかけになったのは、2度の大震災を受けた「被災企業」としての経験だ。1995年の阪神大震災では、半壊した神戸工場(神戸市中央区)の閉鎖を余儀なくされた。2011年の東日本大震災を受けて、白河工場(福島県白河市)は一時生産中止となった。

身をもって感じた被災経験から「日本全国に安全な住宅環境を届けたい」(松本達治・制震ビジネスチームリーダー)という使命のもとで足かけ6年で開発し、12年に発売した。

こだわりは「多くの人が施工できるように」との思いを込めた低価格だ。1棟当たりの価格は施工料を含めて、競合製品の6分の1以下に抑えて約30万円とした。高性能のゴムを開発して小型化した。地震から命を守る陰の立役者の活躍は、今後も神戸から全国へ広がる。

文 大阪経済部 大西康平

写真 三村幸作

<カメラマンひとこと> 実験中の家屋には立ち入ることができないため、あらかじめ撮影機材を内部に設置させてもらった。震度7でも倒れないように、三脚を針金や留め具で床にがっちりと固定。2度の揺れでも家屋に大きな損傷はなく、遠隔操作したカメラも無事だった。

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