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被爆者の詩、オバマ氏共感 「子どもの心 憎しみ育たなかった」
「寛大さ感動」と返信

2017/5/26 15:00
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米国のオバマ前大統領が昨年5月、現職大統領で初めて被爆地・広島を訪れる直前、詩を送った被爆者の女性がいる。詩に込めたのは「私たちの心に憎しみはない」というメッセージ。7カ月後に届いた返礼には「寛大さに感動した」とあった。27日で広島訪問1年。女性は手紙の言葉を胸に核兵器のない世界への思いを発信する。

被爆者の松本暁子さん(右)と詩人のアーサー・ビナードさん(広島市中区)

「I am moved by your generosity.(あなたの寛大さに感動した)」

広島市中区の松本暁子さん(73)宅に昨年12月、オレンジ色の封筒が届いた。差出人は「ホワイトハウス」。国章のハクトウワシのすかしが入った便箋1枚にオバマ氏の感謝の気持ちがつづられていた。謝辞の後には「ヒロシマを訪れ、核なき世界を目指す考えを再確認した」との言葉が続き、「歴史から学び、互いを受け入れることで平和な未来が待っている」と結ばれていた。

松本さんは昨年5月、オバマ氏の広島訪問をニュースで知り、自作の詩を「オバマ氏に渡してほしい」と書き添え、東京の米大使館へ送った。米国が原爆を投下した地を訪れる前に「米国への恨みや憎しみはない」という母から受け継いだ思いを伝えるためだった。

1歳のとき、爆心地から約2キロの地点で母とともに被爆した。母から悲惨な経験や米国への恨みを聞いたことはない。「私の心が負の感情に侵されるのが嫌だったのだろう」。被爆時の状況は後に知ったが、自分も同様に口を閉ざした。

転機は戦後60年を迎えた2005年。「一つの区切り」と、半生を1編の詩にまとめた。

「聴いてつかあさい 母子で被爆 地獄を観たけれど 母は一度も相手を 恨んだり憎んだ 話しはしなかった」「子どもの心に 恨みも憎しみも 育たなかった」

憎しみの連鎖を絶ち、平和な社会が訪れてほしいとの願いを込めた。ただ、当時は率直な思いを人に伝えることに抵抗があり、詩を公表することを控えた。

11年、米国から日本に移り住み、被爆地の実情を訴え続けている詩人、アーサー・ビナードさん(49)と勤め先で偶然に出会った。その姿に「私も声を上げなければ」と心を動かされ、体験を語り始めた。

米国は1月にトランプ政権に代わり、核兵器削減への取り組みが後退したように見える。北朝鮮のミサイル発射実験、欧州や中東のテロなど世界で緊迫した情勢が続く。

平和な世界は1年前より遠のいたと感じるが「オバマ氏の広島来訪や手紙で勇気をもらった。自分ができることをもう一度見つめ直したい」。被爆体験や平和への願いを伝え続けるつもりだ。

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