2019年1月24日(木)

剣豪、作庭でも切れ味 「武蔵の庭園」(時の回廊)
兵庫県明石市

2015/5/8付
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戦国末から江戸初期に活躍した剣豪、宮本武蔵は書や画をよくし、当代一級の文化人でもあった。武蔵が造園や町づくりを指揮したのが現在の兵庫県明石市。明石城の内外に武蔵の息吹を今に伝える庭園が残っている。

夕日を浴びる「武蔵の庭園」

夕日を浴びる「武蔵の庭園」

■石を取り寄せ?

明石城跡を整備した明石公園。高石垣に囲まれた本丸跡に2基の3重櫓(やぐら)が現存し、園内を見下ろす。本丸の南に広がるのが「武蔵の庭園」。2つの池に大滝と小滝が配され、周囲に石や木々が点在する様が風情を醸し出す。市民の憩いの場だ。

庭園は2003年に新設された。江戸期から存在したわけでなく、造りも史実や文献に基づくものではない。しかし「この庭園は武蔵と明石の深い関係を物語ります」と、明石の歴史に詳しい市文化財係の宮本博さんは言う。

小説などで知名度を誇る武蔵だが、実像は謎が多い。信頼性の高い史料が少ないためだが、明石藩主や豊前小倉藩主を歴任した小笠原家に伝わる「清流話」は、明石城での武蔵の造園を明確に記す。

宮本武蔵が作庭したと伝わる本松寺の庭園(兵庫県明石市)

宮本武蔵が作庭したと伝わる本松寺の庭園(兵庫県明石市)

記述によると、藩主の小笠原忠真が三の丸の西側にある原野を庭園とするよう武蔵に命じ、1年がかりの大規模な工事が始まった。庭石は四国や小豆島から取り寄せ、植木は大坂や堺から集めたとある。三の丸の西側は現在、陸上競技場に姿を変えている。

■枯れ山水に伝承

時代が下って大正期。荒れ放題の三の丸西側を整備した記録が残る。その際、多数の庭石を移した先に現在の武蔵の庭園がある。03年の庭園開設の際にも、これらの石は使われたという。「武蔵が手配した石である可能性は十分にあります」(宮本さん)。

このほかにも、明石城近くには、武蔵が造園したと伝わる庭がいくつかある。その一つ、本松寺の庭は小ぶりながら、まとまりの良い枯れ山水だ。浅い枯池に小さな築山が2つ、谷を渓谷にして枯流れとし、築山には大小2つの枯滝。出島は亀を模した。

そもそも武蔵と明石を結ぶ縁はどこにあったのか。武蔵の出生地は美作(岡山県北部)説もあるが、播磨(兵庫県西部)説が有力で、姫路藩主の本多忠政が客分として迎えたとみられる。明石城は1619年、幕府の命により、姫路城に次ぐ西国の抑えとして明石藩主の忠真が築き、全面的に支援したのが姫路の忠政だった。「築城のため、忠政が武蔵を娘婿でもあった忠真のもとに派遣したと考えるのが自然」と宮本さんは言う。

武蔵と明石のかかわりを示すもう1点の史料、享保年間の「明石記」は、武蔵が忠真の命令で明石城下の町割りを指揮し、完成した町並みを「裏行十六間」と記す。16間は約29メートル。宮本さんは「現在も明石の古い町並みの奥行きは29メートル。武蔵が町をつくった証しです」と解説する。

明石公園へは明石駅から徒歩5分。本松寺へは同10分

明石公園へは明石駅から徒歩5分。本松寺へは同10分

32年、忠真は豊前小倉藩に国替えとなり、武蔵も小倉に移ったと考えられる。その後、肥後藩主の細川氏に招かれ、熊本で余生を送った。明石で過ごしたのは十数年ほどか。今に残る庭園や町並みが確かな足取りを伝えている。

文 大阪・文化担当 田村広済

写真 三村幸作

〈より道〉 標準時の経線上でパノラマ

明石市立天文科学館の塔時計(兵庫県明石市)

明石市立天文科学館の塔時計(兵庫県明石市)

明石は「子午線の町」でもある。日本の標準時を定める東経135度の経線の真上に建つのが、明石市立天文科学館。高さ約54メートルの塔時計は、明石城と並ぶランドマークだ。16階の天体観測室は口径40センチの反射望遠鏡を備え、月に1回程度、天体観望会を開く。

360度パノラマで見渡せる展望室は13.14階にある。城を中心に広がる町並みや淡路島が見下ろせる。晴れた日の視界は小豆島や四国まで届く。「明石で最も眺めが良い場所ではないか」と同館の井上毅学芸係長は言う。

展望室までは階段で上ることもできる。壁には宇宙誕生のビッグバンから人類誕生までの137億年を365日に置き換えたカレンダーや、全天88の星座などが描かれている。息を切らせながら階段でたどり着いても楽しめるだろう。

併設されたプラネタリウムは1960年の開館時から稼働を続けている。展示室は子午線や天体観測、暦と時などをテーマにした展示が充実。様々な日時計や2000万分の1のスケールの太陽系天体の模型も興味深い。

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