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城下町に響く辰の刻(時の回廊)

日本最古級 出石の時計台 兵庫県豊岡市

ドン。ドーン。しんしんと雪が降る古い城下町に鈍い太鼓の音が響いた。兵庫県北部の山あいに位置する豊岡市の出石(いずし)地区(旧出石町)。江戸時代は約5万8千石の出石藩として栄えた。その中心部に日本最古級の時計台と伝わる辰鼓楼(しんころう)がある。

辰鼓楼は、現在も太鼓や釣り鐘の音で時間を知らせている

旧出石城大手門の石垣に立つ木造の時計台は高さ19.6メートル。江戸期の面影が残る街並みの中で、濃い茶色の板の櫓(やぐら)の上に西洋風の時計が取り付けられた和洋折衷の姿はとりわけ目を引く。

旧藩医が寄贈

そもそも出石藩では山上にあった寺院が藩から給金をもらって鐘をつき、城下に時刻を知らせていた。しかし廃藩置県で寺への給付が途絶えたため、1871年(明治4年)に太鼓を鳴らして時を知らせる楼閣として辰鼓楼が建てられたという。辰(たつ)は時間の意味だ。太鼓の音で旧藩主の登城を知らせていたという説もある。

時計台に改修されたのは1881年(明治14年)。旧藩医の池口忠恕(ちゅうじょ)が、大病になった際に地域の人々が平癒を願ってくれたことのお礼として、私費でオランダ製の時計を購入し、寄贈した。池口は、時計をメンテナンスする技術を学ばせるために町の若者2人を東京に派遣までしている。

名物の出石そば店や土産物店が並ぶ古い街並み

改修の年は著名な札幌時計台に時計が設置された年と同じ。そのため日本最古とされ、楼のたもとにある豊岡市教育委員会の案内にもそう書かれている。ただ但馬国出石観光協会の森垣康平事務局長は「札幌の方が時計が取り付けられたのは数カ月早いようだ」と解説する。現在は太鼓は叩かないが、毎日、午前8時と午後1時に太鼓、夕方には釣り鐘の音が録音テープで流されている。

出石地区は2007年、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定され、財政面の支援を得て街並みの保存・再建が進められるようになった。兵庫県内では異人館などが残る神戸市北野町などに続く3例目。出石には家老屋敷や酒蔵、町屋などが数多く残り、貴重な観光資源になっている。

海外から観光客

廃藩置県直後に取り壊された出石城の再建も進み、1968年に約5万人だった観光客は、ここ数年は約70万人に膨らんだ。香港など海外も含めたドラマのロケ地としても知られる。

2011年からは地元の商工会などが企画し、観光客向けに着物をレンタルする「出石藩きもの祭り」を毎年秋に開催。昨年は約200着の着物を用意し、多くの人が和装姿でそぞろ歩きを楽しんだ。

きもの祭りについて、観光協会の森垣さんは「最近はインバウンド(訪日外国人)効果もあり、外国人も多く参加するイベントになった」と胸を張る。そして辰鼓楼は「街の中でも最も人気のあるスポット」だという。

江戸から明治、そして現代へ。辰鼓楼の役割は時代につれて変遷してきたが、今も3代目の時計が時を刻み続けている。

文 大阪社会部 塙和也

写真 尾城徹雄

 《交通》辰鼓楼が立つ出石地区の中心部は、JR山陰本線豊岡駅から全但バスで約30分の出石バス停で下車、徒歩5分。
 《散策》近畿最古の芝居小屋の出石永楽館から家老屋敷、出石城跡、辰鼓楼などを巡り、宗鏡寺(すきょうじ)(別名・沢庵〈たくあん〉寺)に至るモデルコースは約2時間。入場料が必要な施設もある。

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