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ネット資金調達、子供の命救う 高額医療機器の購入に一助
公的支援に限界も

2017/9/26 16:30
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がんなど重篤な子供の治療を担う各地の高度小児医療施設が、高額医療機器などの購入にインターネットで資金を集めるクラウドファンディング(CF)を活用し始めた。小児専門の病院は一般病院と比べ多くの人手が要るため経費がかさむ。公的な財政支援もあるが運営は厳しい。CFには多くの賛同が集まっており、専門家は「資金調達の手法として定着してほしい」と期待する。

大阪母子医療センターは保育器買い替えのための寄付を呼びかけている(大阪府和泉市)

大阪母子医療センターは保育器買い替えのための寄付を呼びかけている(大阪府和泉市)

「命の危機にある赤ちゃんのために、最新の保育器を」――。大阪府立病院機構「大阪母子医療センター」(和泉市)は9月中旬、重篤な新生児の搬送に必要な保育器の購入に向け、ネット上で寄付の呼び掛けを始めた。同センターとしては、初めての試みだ。

保育器は車内で診察できる緊急車両「ドクターカー」に装備しているものの、10年以上前の製品で老朽化が進む。しかし、同センターは診療報酬だけでは足りない収入を府からの補助金で賄う「綱渡りの運営」(担当者)。最新式の保育器は揺れを最小限に抑えられるが、1台約250万円という購入費を捻出するのは難しかった。

CFにはセンターで子供が治療を受けた親や医療関係者らが協力し、目標額の300万円は3日で到達。26日時点で集まった金額は700万円に達した。同センターの倉智博久総長は「故障などの緊急事態でないと買い替えるのは難しい。少しでも多くの救える命を救いたい」と話す。

寄付者の子供にも医療に関心を持ってもらおうと、出資額に応じて、手術を模擬体験できるキッズセミナーやドクターカーのお披露目会に招待する。

病院運営に詳しい国際医療福祉大の羽田明浩准教授(医療経営戦略論)によると、子供の患者は言うことを聞かず騒いでしまうことが多く、通常の検査や治療にもより人手がかかるため、高度小児医療施設では多数の看護師らを配置している。

一般病院と比べると人件費が高くなり、国や自治体が収入の1~2割程度にあたる補助金を支出し、運営を支えているのが実情という。このため医療機器や設備への投資費用に悩むケースは少なくない。

東京都世田谷区の「国立成育医療研究センター」では7月、小児がんの治療に使う無菌室を増設するためCFを活用。今月8日までの約2カ月間で目標の2倍を超える3100万円を集めた。無菌室は患者増加のため満室状態が続いており、すぐに治療ができないなどの支障が出ていた。担当者は「温かい申し出を重く受け止め、整備を急ぎたい」と話した。

寄付した人たちからのメッセージも、病院職員らの良い刺激になっている。「長野県立こども病院」(同県安曇野市)がドクターカーの購入のため2月に実施したCFでは、市民らから「頑張って」「応援しています」といった声が多く届いたという。原田順和院長は「自分たちの職務に改めて誇りを感じるきっかけになった」と話す。

国際医療福祉大の羽田准教授は「小児専門病院は『赤字部門』とされ、経営が厳しい上、財政難の国や自治体の支援にも限りがある」と指摘。「CFは目的や必要性をしっかり説明すれば多くの資金が集まる可能性があり、医療水準向上のために効果的な手法だ」と今後の広がりに期待する。

■小児がん拠点、全国15カ所
▼高度小児医療施設 小児疾患は患者数が少なく、医師の数も限られている。新生児科や小児腫瘍科など診療科も細分化され、医師には高い専門性が求められるため、国は高度な治療を担う病院の拠点化を進めている。
 厚生労働省によると、毎年約2千数百人が小児がんを発症し、小児の病死では最多を占める。2012年から小児がん治療を中心的に担う「小児がん拠点病院」の整備を進め、全国15カ所が指定されている。重篤な小児患者を24時間体制で受け入れる「小児救命救急センター」は全国で14カ所あり、県をまたいだ搬送も行われている。

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