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もっと関西 ウナギ・ハゼ・シジミ 淀川「天然物」イケるで(とことんサーチ)
水質改善、ブランド化で発信

2017/7/1 6:00
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大阪のオフィス街を流れる淀川。かつては「汚い」という印象が強かったその川で取れる水産物が、新たな大阪名物の座を狙っているらしい。「淀川産(よどがわもん)」というブランド名で漁業協同組合などがあの手この手のPRを展開、加工品の開発も進めている。地元漁業再興への期待も集まる淀川産の実力と、ブランド強化に向けた取り組みの現場を探ってみた。

「淀川で天然ウナギが釣れる。しかも食べられる」。記者は釣り好きの同僚からそんな話を聞いた。淀川での釣り事情に詳しい、釣具店「タックルベリー大阪東淀川店」(大阪市東淀川区)の店員、三宅大地さん(25)も「名物として料理店が提供している」と言うので協力を仰ぎ、6月中旬の夜、釣りに赴いた。

「手首ぐらいの太さのウナギを釣ったこともある」。三宅さんの言葉に心を躍らせながらさおを出し、待つこと4時間……。だが釣果はなかった。「漁師は専用の漁具をいくつも仕掛けて取る。素人なら1シーズンで2、3匹取れれば良いほう」と三宅さんは慰めてくれたが、悔しい。

釣れぬなら店で食べるまでだ。記者は淀川のウナギを扱う日本料理店「旬屋 じょう崎」(大阪府吹田市)に向かった。「せいろ蒸し」(1人前税別4000円)のウナギは、肉厚でうまみが強く、臭みはほとんどない。主人の城崎栄一さん(50)も「天然物なのに皮が柔らかく、脂も上品」と太鼓判を押す。

城崎さんが淀川のウナギを扱い始めたきっかけは、大阪市漁業協同組合(此花区)と、大阪の食材の普及に取り組むNPO法人「浪速魚菜の会」(大阪市天王寺区)などが連携して開いた試食会だ。聞けば市漁協と同会は2012年、伝統的漁法で取る淀川の高品質な水産物を「淀川産」の名でブランド化した。

「優れた水産物が取れると知られれば、淀川が汚いという印象も変わるはず」。市漁協総務の次長、畑中啓吾さん(38)は狙いを語る。市漁協の関連会社が地元漁師からウナギを買い取り、料理店などに卸す仕組みを構築。今では15程度ある卸先への供給が追い付かないほどの人気だ。

ブランド化はウナギだけ? 実はウナギより前に、市漁協が05年からブランド化に挑んだのがシジミだ。砂地で育ち殻が茶色になるので「魚庭(なにわ)のべっこうしじみ」と命名。市漁協が自らスーパーなどに売り込んだ。

だが在庫管理の難しさや漁獲量の変動が障壁に。「安定供給が難しく、小売店とのやり取りやPRを市漁協単独で行うのは難しかった」と畑中さん。その教訓から、ウナギでは魚菜の会などと組んだ。

今年1月には、シジミの粉末やエキスを使った「大阪名産べっこうしじみ飴(あめ)」の販売も開始。魚菜の会の代表理事、笹井良隆さん(61)は「加工品なら、お試しで手に取ってもらいやすくなる」と考えた。業者に卸せない小さなウナギを「八幡巻(やはたまき)」に加工したのも、同様の発想だ。

笹井さんによると、目下の淀川産一押しはハゼ。秋から冬が旬の白身魚で、関東では天ぷら食材などで有名だが、関西ではなじみが薄い。そこで大阪新名物として打ち出そうと、魚菜の会が串カツにすることを思い付き、試食会で料理店などに提案している。

ブランド化の波は料理店や自治体も巻き込んだ広がりを見せる。ウナギ取扱店はメニューで「天然物」を強調、「評判を聞き府外から訪れる人も増えた」(笹井さん)。淀川が流れる枚方市や高槻市は、ふるさと納税の返礼品にべっこうしじみ飴を採用。地元食材PRに一役買っている。

淀川は元来、栄養分が豊富で、漁業の始まりは江戸時代に遡る。高度経済成長期の人口流入で生活排水が増え、一時は水質が急激に悪化したが、その後の下水道普及で水質が改善し、漁獲量も回復したという。畑中さんは「淀川産が地元漁業再興の足掛かりになれば」と願いを込める。

一方、新たな課題も。河川の浄化が進んだ結果、栄養分が減り、漁獲減少や品質低下の懸念が出始めているという。大阪新名物の胎動は、我々に淀川へのかかわり方を改めて問いかけている。

(大阪社会部 小安司馬)

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