仏教の源 探索の証し 龍谷ミュージアム(時の回廊)
京都市

2017/1/27 6:00
保存
共有
印刷
その他

仏教は紀元前5世紀ごろにインドで興り、中央アジアから中国、朝鮮半島を経て、6世紀の日本に伝来したとされる。20世紀初頭、西本願寺(京都市)の第二十二代門主、大谷光瑞(こうずい)は、仏教東漸(とうぜん)の道と遺跡の状況を探ろうと中央アジアに学術目的の「大谷探検隊」を派遣した。仏教の源をたどる日本初の活動と成果の一端は、龍谷大学の仏教総合博物館「龍谷ミュージアム」(同市)で展示される。

■広い地域に足跡

デジタル技術を駆使して復元された「ベゼクリク石窟」の大回廊の一部

デジタル技術を駆使して復元された「ベゼクリク石窟」の大回廊の一部

大谷探検隊は1902年から14年までに3回、各回1年半から4年弱の期間で派遣された。隊員はそれぞれ2~5人の若手仏教者。インドから中国・北京に及ぶ地域の仏教遺跡を巡り、残されていた古い時代の仏像や経典、壁画の断片などを持ち帰った。

中央アジアは当時、世界地図上の空白地域とされ、スウェーデンやイギリス、フランス、ドイツ、ロシアが国家主導で競うように探検隊を送っていた。その中にあって、「大谷探検隊は最も広範な地域に足跡を残した」と龍谷大学の入澤崇文学部長は話す。

同探検隊が各国と伍(ご)した証しを象徴する展示物が、龍谷ミュージアムにある。「ウイグル仏教芸術の最高到達点」とされるベゼクリク石窟寺院の第15号窟の大回廊を彩っていた壁画(11世紀)の原寸大復元展示だ。

同寺院は中国・新疆ウイグル自治区のトルファン郊外にあり、約80窟から成る。多くは西ウイグル王国(9~13世紀)時代のもの。ミュージアムでは第15号窟の大回廊の壁画計15面のうち、9面をL字型の回廊(高さ約3.5メートル、長さ約15メートル)にして紹介する。

■散った断片復元

壁画は「誓願図」と呼ばれ、前世の釈迦(しゃか)が衆生(しゅじょう)救済に努めたいと誓願を立てる様子を描いたという。各国の探検隊が壁画保護などを掲げてはぎ取り、持ち帰ったことから、現地には一部が残るだけ。断片は現在、インドやドイツ、ロシアの博物館などに分散する。

大谷探検隊が収集した壁画断片は東京国立博物館や韓国中央博物館、中国の旅順博物館で所蔵している。大谷光瑞が門主を退いた後、収集品の一部は実業家の久原房之助の手を経て、朝鮮総督時代の寺内正毅に渡ったことなどによる。復元では、龍谷大学が各国の博物館から壁画の断片の画像を集め、それを組み合わせるなどした。

入澤文学部長は大谷光瑞が探検隊を組織した理由を、「20世紀初頭、日本は西洋の近代主義に対抗する価値観を探っていた。光瑞師は仏教がその力を持っていると考え、それで仏教が広まったもようをたどろうとしたのだろう」とみる。

大谷探検隊が収集した品々が示すのは、現地における仏教受容の態様だけではない。例えば蓮華中仏坐像(ざぞう)(5~7世紀)は、大谷探検隊が新疆ウイグル自治区のコータン近郊で収集したが、イギリス隊やドイツ隊も同様のものを持ち帰った。20世紀初頭における各国のアジアへの関心が透けてみえるのが興味深い。

文 編集委員 小橋弘之

写真 大岡敦

《交通・見学》龍谷ミュージアムへはJR京都駅から徒歩約15分。ベゼクリク石窟寺院の原寸大復元壁画は常時展示されている。2月19日まで平常展「仏教の思想と文化―インドから日本へ―」と特集展示「追慕抄 九條武子」を開催。常設展観覧料は一般500円。月曜休館。((電)075・351・2500)
保存
共有
印刷
その他

関連キーワード

電子版トップ



[PR]