2019年9月15日(日)

大阪人=阪神ファンじゃないの(とことんサーチ)
熱狂の傍らに少数派

2015/11/28 6:00
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通天閣、グリコの看板、そして阪神タイガース――。そんなイメージに、自分も「大阪人はみんな阪神ファン」と思っていた。だが、取材先に話題を振っても「野球は嫌いやないけどなあ……」「阪神は兵庫の球団やろ」と言葉を濁されることも。訳を聞いてみると、大阪の野球ファンの複雑な思いが見えてきた。

スポーツバー「難波のあぶさん」店内には南海時代のユニホームや写真が並ぶ(大阪市中央区)

スポーツバー「難波のあぶさん」店内には南海時代のユニホームや写真が並ぶ(大阪市中央区)

「連覇だ!」。10月29日、大阪・ミナミの道頓堀の一角にあるスポーツバー「難波のあぶさん」。約80人が福岡ソフトバンクホークスの日本シリーズ優勝に涙を流して喜んだ。「南海もこれほど強ければ身売りの必要はなかったのに」。力説するオーナーの武知義一さん(62)は、「南海ホークス大阪応援会」が母体の「福岡ソフトバンクホークス関西応援会」の前会長だ。

ホークスは50年間、大阪に本拠地を置いたが1988年、福岡へ移転。30年近くがたっても大阪には根強いファンがおり、昨年優勝を決めた夜には、同店の客らが大阪球場跡地に建つ「なんばパークス」まで歩き、高らかに応援歌を歌ったという。

大阪府枚方市出身のタレント、森脇健児さん(48)も根強いホークスファン。小学生のころは大阪球場で聞くおっちゃんたちのユーモアあふれるヤジが楽しみだった。「敵チームの梅田選手に『梅田が難波でウロウロすんなー』とか、笑えるやろ。阪神?いや、僕はホークス一筋」

大阪球場跡地に建った「なんばパークス」にはひっそりとモニュメントがある(大阪市浪速区)

大阪球場跡地に建った「なんばパークス」にはひっそりとモニュメントがある(大阪市浪速区)

実は森脇さんのような人は多いらしい。大阪の野球文化に詳しい永井良和・関西大学教授(55)は「初めから『阪神ファン』と言える人は幸せだと思う。大阪の野球ファンは多くが球団に裏切られてきたから」と話す。関西にはかつて4球団があり、熱心なファンが今でもいる。

意外なのが東北楽天ゴールデンイーグルス。「ファンは関東などより多いのでは」と話すのは楽天の応援団「関西荒鷲会」の福井貴大団長(23)だ。2004年に近鉄がオリックスと統合した際、人気選手の移籍に伴い元近鉄ファンが楽天に流れたという。

とはいえ、大阪の一番人気はやっぱり阪神。中央調査社(東京・中央)が今年7月実施した「一番好きなプロ野球チーム」の調査では、近畿地方の45.3%が「阪神」と回答した。続く巨人(15.6%)を大きく引き離し、京都なども含むことを考えればかなり多いといえそうだ。

そのわけを永井教授は、50年のセ・パ2リーグ制の導入に遡る。ほか3球団がパに加入したため、阪神はセ唯一の関西球団に。東京の巨人と戦う姿が注目され、大阪経済の停滞が目立ち始めた60年代後半からは、「鬱屈した思いを野球で晴らすようになった」。さらに80年代以降は球団再編が加速、阪急や近鉄は球団名などの変遷に伴いファンが離れる一方で、阪神は経営も本拠地も70年以上不変。かつて「大阪タイガース」との名称だった歴史もあり、大阪のファンも引き寄せた。

「阪神が優勝したときの経済効果は約600億円で、他球団の2倍以上」とはじくのは、宮本勝浩・関西大名誉教授(70)。「阪神ファンでなくても関西全体が盛り上がるのは間違いない」と太鼓判を押す。確かに野球好きでなくても阪神に期待する人は多く、街では「阪神優勝のセールが楽しみ」(大阪市東住吉区の55歳主婦)との声も聞かれた。阪神が勝ち進み、大阪が盛り上がる――大阪の野球ファンの複雑な思いをかみしめつつ、一度はそんな瞬間に立ち会ってみたい。

(大阪社会部 大西康平)

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