2017年11月22日(水)

豪華な副葬品 謎めく主 新沢千塚古墳群(時の回廊)
奈良県橿原市

2014/10/24 6:30
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 大和三山の一つ、畝傍山(うねびやま)の南西に広がる丘に、ミステリアスな貴人が眠っていた古墳がある。繊細な細工が目を引く黄金の耳飾りや指輪、澄んだコバルトブルーのガラス皿。出土した豪勢な副葬品は奈良県橿原市の「歴史に憩う橿原市博物館」で光を放つ。

126号墳から見つかった豪華な副葬品の復元模造品が「歴史に憩う橿原市博物館」に展示されている

126号墳から見つかった豪華な副葬品の復元模造品が「歴史に憩う橿原市博物館」に展示されている

■古墳600基が集中

 この博物館は国史跡・新沢千塚古墳群の傍らにある。2キロ四方の丘陵に4世紀後期~6世紀後期の古墳約600基が集中し、国内有数の古墳群とされる。直径10~20メートルの小規模な円墳が大半を占める。

 1962年から5年がかりの大規模な発掘で、多彩な品々が出土した。特に注目を集めたのが、126号墳から見つかった金銀やガラスなどの副葬品で、国重要文化財に指定された。橿原市博物館の展示室中央で輝いているのは精巧な復元模造品。オリジナルは東京国立博物館にある。

展示されている指輪

展示されている指輪

 126号墳は東西22メートル、南北16メートルの長方形墳。5世紀後半の築造と推察されている。

 古墳の主は、金銀の装飾品を身にまとった姿で葬られていた。中国東北部や朝鮮半島各地からもたらされた品々と考えられている。枕元には透明なガラス碗(わん)が青いガラス皿に重ねてあった。これらは今年7月、東京理科大などの蛍光X線分析でササン朝ペルシャ由来の品と裏付けられた。

 まさしくシルクロードの終着点とも呼ぶべき豊かな国際色。ただ「被葬者の正体が、何ともつかみにくいんですよ」と同博物館学芸員の石坂泰士さんは語る。

 一番の謎が、古墳の小ささと副葬品の豪華さが釣り合わない点だ。例えばガラス碗の類例は、大山古墳(仁徳陵、堺市)や高屋築山古墳(安閑陵、大阪府羽曳野市)など巨大古墳から出土したと伝わる品くらいしか見当たらない。

冠飾り(竜文方形板)も精巧な仕上がり

冠飾り(竜文方形板)も精巧な仕上がり

■国内外の出土品

 遺骨は残っていないが、女性の副葬品とされる青銅製熨斗(のし)=アイロンなどが出土し、腕輪などが小さいことから、被葬者は女性か子供とみられている。渡来人との見方が強いが「国産の刀や鏡も副葬されており、単純には言い切れません」と石坂さん。「この地にもともと住んでいた有力者ではないはず。国外から逃れて来て、匿(かくま)われていた高貴な客人との説もあります」

 他の多くの古墳は身分がさほど高くない中間層の墓と考えられているが、どの氏族の墓域かは蘇我氏、東漢(やまとのあや)氏、大伴氏など諸説ある。海外の品と国産品が出土しており、渡来人と倭(わ)人が入り交じっていた様子がうかがえるという。

 橿原市博物館は旧館(千塚資料館)を36年ぶりに全面リニューアルし、今年4月に開館したばかり。展示の目玉である126号墳の復元模造品400点は、96年から3年がかりで東京国立博物館と共同で研究・制作したものだ。

 出土品に残る加工痕を細かく分析。製作技法や工具まで解明し、精巧に仕上げてある。実物と区別するため、あえて異なる材質を用い、復元模造を示す「C」の文字まで刻んだという。126号墳に眠る貴人も、見事な出来栄えに目を細めていることだろう。

文 編集委員 竹内義治

写真 伊藤航

<より道> 3次元測量、調査に威力

 歴史に憩う橿原市博物館の周辺に広がる新沢千塚古墳群には遊歩道が設けられ、丘陵の地表に円墳が泡立つように密集する奇観を楽しめる。「古墳があまりに多く、傾斜地にある場合などは自然地形と区別しにくい」と同博物館学芸員の石坂泰士さんは説明する。

 2011年、奈良県立橿原考古学研究所は航空測量会社「アジア航測」と共同で、レーザー装置搭載のヘリによる3次元航空測量を同古墳群で実施し、立体地図を作成した。竹林に隠れた全長42メートルの前方後円墳を発見して話題となった。

 レーザー光を1秒間に18万回発射し、樹木や草が茂っていても隙間から地表に到達させ、地形を読み取る仕組みだ。「50センチ程度の凹凸を判別できる。古墳群の土地利用法や築造順などの研究につながる」と同研究所技術アドバイザーの西藤清秀さんは話す。

 レーザー3次元航空測量は災害時の地形変化の調査などで活躍。遺跡調査にも応用が広がっており、宮内庁が陵墓として管理する古墳や険しい頂に築かれた山城といった、容易に立ち入れない場所などで威力を発揮している。

「歴史に憩う橿原市博物館」は近鉄橿原神宮前駅から奈良交通バスに乗り「川西」下車、徒歩2分

「歴史に憩う橿原市博物館」は近鉄橿原神宮前駅から奈良交通バスに乗り「川西」下車、徒歩2分

新沢千塚古墳群の立体地図(橿原考古学研究所提供)

新沢千塚古墳群の立体地図(橿原考古学研究所提供)


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