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男女の業、絵巻で易しく 道成寺 安珍・清姫の伝説(時の回廊)

和歌山県日高川町

能や歌舞伎、人形浄瑠璃などの演目として人気がある「安珍・清姫伝説」の舞台として知られる道成寺(和歌山県日高川町)。創建は701年とされ、県内最古の寺でもある。平安時代に作られた千手観音像や日光・月光菩薩(ぼさつ)像は国宝に指定されている。縁起堂では毎日、安珍と清姫の絵巻物を見せながらの絵解き説法が行われ、参詣者に仏教の教えを伝えている。

ユーモア交え

絵巻物を見せながらわかりやすく仏教の教えを伝える

「醍醐天皇の時代、延長6年(929年)、奥州からハンサムな僧が熊野詣でに来ました」。書見台に絵巻物「道成寺縁起」を広げ、住職の小野俊成さんが語り出した。道中、一夜の宿を求めた安珍に一目ぼれした清姫。熱心にくどくが、安珍は修行中を理由に断り、帰りにきっと立ち寄るからと言い残して寺を去る。しかし安珍は戻らず、だまされたと知った清姫は追いかけるうちに蛇体と化し、道成寺の鐘に隠れた安珍を捕まえ焼き殺してしまう――。

「真砂の里から道成寺まで60キロ追いかける。今で言えばストーカー殺人」。ユーモアを交えながらの説法はおよそ20分。「女性がこんなふうになってしまうのは、男の方に責任があります。奥さんを家の宝として大事にしましょう」。物語の教訓として示すのが「妻宝(さいほう)極楽」という言葉だ。仏教の「西方極楽」をもじって先代住職が考案した。女性の執着を戒める物語と思われがちだが、小野さんは「名作は幾通りにも解釈できる」と話す。

絵解き説法は参詣客の要望に応じて随時行っており、1日平均7~8回、多い日には12回に達する。これだけ多く実施する寺は全国でも珍しい。用いているのは平成に入って複製した絵巻物だが、内容は室町時代に作られた原本のまま。足利義昭が巻末に花押を書き加えたため、そのままの形で保管されるようになったという。「ユーモアがあり、気取らずに仏教のメッセージを伝えられる」

人気演目、脈々と

701年創建の道成寺には千手観音像など国宝が安置されている

安珍・清姫の物語は人形浄瑠璃の「日高川入相花王(ひだかがわいりあいざくら)」に、鐘を再興する後日談は能の「鐘巻」や歌舞伎の「京(きょう)鹿子(かのこ)娘道成寺」などにと、道成寺の伝説は様々な演目に取り上げられている。人気の理由を小野さんは「恋愛物語で誰にでも親しみやすく、男は逃げ回るばかりで、痛快なところもある」と分析する。

縁起堂にはこれまでに演じた役者の写真がずらりと並ぶ。毎年90組ほどが公演の成功祈願に訪れ、公演後に奉納された写真は10年間は堂内などに飾っている。歌舞伎俳優の坂田藤十郎や坂東玉三郎、名優とうたわれた六代目尾上菊五郎や、勘九郎時代の十八代目中村勘三郎の写真もあり、ファンには探す楽しみもある。

千年以上続く寺にとって、今や欠かせない絵巻物の原本は、現在、約300年ぶりの修復作業をしている。完了するのは来年春の予定で、その後、一般に公開することも計画しているという。

文 大阪・文化担当 小国由美子

写真 伊藤航

 《交通・拝観》JR紀勢線・道成寺駅から徒歩8分。拝観は午前9時~午後5時。拝観料は中学生以上600円、小学生300円。絵解き説法は午後4時半までに窓口に申し込む。
 《無料公開》春と秋に本堂を無料公開する。今秋は11月30日までの午前10時~午後3時。21、22日は書院も。

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