アンジェイ・ワイダ氏が死去 映画監督
【欧州総局】ポーランドの映画監督、アンジェイ・ワイダ氏が9日、死去した。90歳。入院中だった。ワルシャワ蜂起など史実に材を取った作品を撮り続けた。第2次大戦前後のポーランド社会の流転を描いた「灰とダイヤモンド」(1958年)など「抵抗三部作」が著名。2000年には米アカデミー賞名誉賞を受賞した。親日家としても知られた。
26年ポーランド北東部のスバウキ生まれ。第2次大戦中は侵攻したナチス・ドイツに対する抵抗運動に参加。戦後、クラクフ芸術大を経てウッジ映画大に進んだ。
デビュー作の「世代」に続く「地下水道」(56年)がカンヌ国際映画祭審査員特別賞を受賞。ポーランドの対ソ連地下抵抗運動を描いた代表作「灰とダイヤモンド」と共に、抵抗三部作と呼ばれる一連の作品で不動の地位を確立した。
81年には民主化を率いた自主管理労組「連帯」を取り上げた「鉄の男」でカンヌ映画祭の最高賞、パルムドールを獲得。民主化前後の89-91年には上院議員を務め、連帯議長から大統領に就任したワレサ氏の諮問機関「文化評議会」の議長に就いた。
晩年まで創作意欲は衰えず、07年にはソ連によるポーランド軍人らの大量虐殺事件が題材の「カティンの森」を発表。13年には「ワレサ 連帯の男」で再びポーランドの民主化への歩みを取り上げた。
若き日に浮世絵などの日本美術に感銘を受けたのが芸術を志すきっかけだったこともあり、親日家だった。87年に受賞した京都賞の賞金を基金に母国の古都クラクフに日本美術技術センター「マンガ」を設立した。同センターは日本の伝統工芸品や美術作品で中・東欧随一のコレクションを誇る。