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米「法人税の国境調整」断念 日本企業への打撃回避

【ワシントン=河浪武史】米ホワイトハウスと議会指導部は27日、税制改革で焦点となっていた「法人税の国境調整」の導入を見送ることで合意した。同案は輸出課税を免除する一方で輸入は課税強化する新しい仕組みで、日本企業にとっては自動車など対米輸出品の値上がりにつながるリスクがあった。連邦政府には大幅な税収増が見込めるものの、内外から導入反対論が高まっていた。

ムニューシン財務長官やコーン国家経済会議(NEC)委員長、ライアン下院議長、マコネル上院院内総務らが同日、共同声明を発表した。声明では「米産業が海外勢と競争できるよう、税率の引き下げが必要だと考えている」などと強調。ライアン氏ら下院指導部が提案していた「法人税の国境調整」は「不確実性が多く、見送ることを決めた」と明記した。

トランプ氏は、選挙期間中は中国製品やメキシコ製品に高い関税をかけると訴えてきたが、最近では言及していない。トランプ政権は4月末に公表した税制改革の基本方針で「法人税の国境調整」を取り上げず、下院案に否定的な考えをみせてきた。下院案は連邦法人税率を35%から20%に下げる一方、輸出は免税して輸入には20%を課税する仕組み。10年で1兆ドルを超す税収増が見込めるが、消費者物価が急上昇するなど副作用の懸念も指摘されていた。

事実上の関税引き上げとなるため、日本など貿易相手国には打撃が大きく、日本製自動車の対米輸出が半減するとの試算もあった。輸出の免税は世界貿易機関(WTO)ルールに抵触するとの指摘もあり、欧州勢なども米国に「国境調整」の導入を見送るよう求めていた。

ホワイトハウスと議会指導部は今秋の予算審議を前に、約30年ぶりとなる本格的な税制改革法案の策定を急ぐ。トランプ政権は税率を15%まで下げるよう主張するが、下院指導部は20%にとどめる案を示してきた。「国境調整」を断念すれば税収確保策が失われ、減税余地が狭まって税率の引き下げも小幅にとどまる可能性がある。

米議会は医療制度改革法(オバマケア)の見直しで紛糾する。代替法案に反対する保守強硬派は、支持母体の石油精製業者などの反対を受けて「法人税の国境調整」にも異論を唱えてきた。ホワイトハウスと議会指導部がこの時期に「国境調整」の見送りを表明したのは、オバマケア代替法案の審議加速に向け、保守強硬派を懐柔するためとの見方もある。

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