米マイクロソフトとグーグル、相互に独禁当局への告発取り下げ
【シリコンバレー=小川義也】米マイクロソフトと米グーグルは22日、世界各国の独禁当局に訴えていた双方に対する告発をすべて取り下げることで合意したと明らかにした。昨年、係争中だったすべての特許訴訟で和解したのに続く動き。両社のトップが相次いで交代したことや、プライバシー問題を巡り、対政府で共同戦線を張る必要が出てきたことなどが背景にあるとみられる。
マイクロソフトの広報担当者は日本経済新聞の取材に対し、「法的課題の優先順位が変わった」と述べる一方、「企業や消費者を巡る(グーグルとの)競争に全力を挙げる姿勢に変わりはない」と強調した。グーグルの広報担当者も「法廷ではなく、製品で競い合いたい」とコメントした。
両社は互いに基本ソフト(OS)やネット検索、広告などの分野で独占的地位を乱用していると訴えてきた。欧州委員会は20日、スマホ向けOSを巡り、グーグルが独禁法に違反した疑いがあると警告したが、そもそも調査を働きかけたのはマイクロソフトだった。
転機は2014年2月だ。好戦的だったスティーブ・バルマー氏からマイクロソフトの最高経営責任者(CEO)のバトンを受け継いだサティア・ナデラ氏は、同社がスマホ市場で出遅れた現実を直視。従来は「ウィンドウズ」とセットだった業務ソフト「オフィス」をグーグルやアップルのスマホOSにも供給するなど、名を捨て実を取る路線を歩んできた。
グーグルも昨年10月の大がかりな組織再編で、スンダル・ピチャイCEOが誕生した。同氏は反マイクロソフトの急先鋒(せんぽう)の1人だったエリック・シュミット元CEO(現持ち株会社会長)らに比べると穏やかで、昨秋には係争中だった約20件の特許訴訟すべての和解を決めた。
マイクロソフトは14日、同社のデータセンターで保管する顧客のメールや文書を押収した捜査当局が、その事実を伏せておくよう過度に命じるのは違憲だとして米司法省を提訴した。犯罪捜査とプライバシーの問題を巡っては、米政府と米IT企業が対立するケースが増えており、業界としてのまとまりを優先した方が得策との判断が働いたとの見方もある。