FRB、金融危機対応を脱却へ 米量的緩和導入9年

2017/9/21 3:05 (2017/9/21 11:07更新)
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【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は20日の記者会見で、2008年の金融危機後に導入した量的緩和策の終了決定を巡り「米経済は好調で、金融政策を正常化する」と述べた。だが成長率そのものは伸び悩み、物価上昇率も鈍いなど実体経済の正常化は見通せない。金融危機の傷痕はなお深く、FRBは険しい政策運営が続く。

FRBは08年に金融危機に見舞われ、市場の崩壊を止めるため、ゼロ金利政策とともに初めての量的緩和に踏み切った。その後も景気不安は収まらず、量的緩和は第2弾(10年11月~11年6月)、第3弾(12年9月~14年10月)と長期化。米国債などの保有資産は危機前の9千億ドルから5倍の4.5兆ドルに膨らんだ。

FRBがゼロ金利政策を解除したのは15年12月。政府とFRBのなりふり構わぬ危機対応策で、米景気は09年夏以降、回復局面に入った。FRBは16年以降、さらに3回の追加利上げに踏み切ったが、イエレン議長らが求めてきたのは、量的緩和で買い入れた資産を減らして平時に戻す「金融政策の正常化」だ。

量的緩和で主に買い入れたのは、米国債と住宅ローン担保証券(MBS)だ。FRBが利上げを続ければ米国債もMBSも金利が上昇(価格は下落)して、FRBの保有資産に含み損が出かねない。FRBの財務基盤が危うくなれば、基軸通貨ドルの信認が揺らぎ、世界経済に大きなリスクをもたらす。イエレン氏らが資産縮小を急いだのはそんな背景がある。

ただ、金融政策の正常化が進んでも、肝心の実体経済の正常化が済んだとは言い切れない。米議会予算局(CBO)によると、米経済の巡航速度である潜在成長率は1990年代の3%台から現在は1.8%に低下。金融危機後、企業が長期にわたり投資を手控え、生産性が低下して経済全体の活力が落ちたためだ。

そのため米労働市場は完全雇用に近づいたにもかかわらず、賃金上昇率は2.5%程度と危機前の3~4%に届かない。賃上げ圧力が弱いため物価も高まらず、インフレ率は前年同月比1.4%(7月)と目標の2%からむしろ遠のいた。

20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では来年以降の利上げ見通しも議論し、18年は3回の追加利上げを中心シナリオとして示した。ただ、利上げが打ち止めとなる「政策金利の天井」を2.75%と見込み、19年から20年にかけて利上げを停止する可能性も示唆。潜在成長率の低下で金利水準そのものが下がり、景気を操作する金融政策のダイナミズムは失われつつある。

イエレン議長は記者会見で、急激な景気悪化時には資産縮小を停止する考えも示した。さらに「利下げ余地がなくなれば、政策当局者が(米国債など)長期債の購入という策を排除するとは思えない」とも主張。将来的には量的緩和が復活する可能性もにじませた。

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