米追加利上げ、0.25% 年内さらに2回見込む
【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、昨年12月以来、3カ月ぶりの利上げを決めた。利上げ幅は0.25%。同時に公表した政策金利見通しでは、2017年中にさらに2回の追加利上げを見込んだ。15年、16年と年1回にとどまっていた利上げペースが加速し、ドル相場など世界市場への影響が一段と強まりそうだ。

FOMCは短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を、年0.50~0.75%から0.75~1.00%に引き上げた。利上げはイエレン議長ら投票メンバー10人のうち9人が賛成したが、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は金利据え置きを主張して反対票を投じた。
FOMC後に公表した声明文では「物価上昇率は目標の2%に近づいた」と強調した。FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数は1月に前年同月比1.9%まで上昇しており、今回の利上げ判断を後押しした。失業率も5%を下回る水準まで低下し、イエレン議長らは完全雇用にほぼ達したとみている。
市場が注視する今後の利上げペースは、今回を含めて年3回とする中心シナリオを据え置いた。FOMCメンバー17人の利上げ見通し(中央値)は、18年が3回、19年も3回程度で、昨年12月時点の見通しをほぼ維持した。
金融危機からの回復を受けて、FRBは15年12月に9年半ぶりの利上げに踏み切った。16年12月に追加利上げしたものの、これまでの利上げペースは年1回にとどまっており、17年以降は金融引き締めが緩やかに加速しそうだ。
トランプ米政権は大型減税と巨額インフラ投資を公約する。予算や税制の決定権がある米議会の審議は始まったばかりで、財政支出の時期や規模は見通せない。大型の財政拡張によって物価が上振れすれば、FRBの利上げペースがもう一段加速する可能性もある。
FRBは量的緩和で膨らんだ保有資産の縮小も視野に入れ始めた。市場は保有債券の圧縮時期や規模に注視しているが、今回のFOMC後の声明文では「政策金利の正常化が進むまでは、保有債券に再投資する現行政策を維持する」との従来の表現を据え置いた。
基軸通貨ドルを抱えるFRBの利上げは、世界のマネーの流れに影響する。金利上昇で利回りが見込めるドルに資金が回帰し、日本は円売りが進みやすい地合いとなる。一方で緩和マネーが集中していた新興国は、資本流出や通貨安のリスクに見舞われる。