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イエレンFRB議長の会見要旨

米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は14日、連邦公開市場委員会(FOMC)後に記者会見した。主なやり取りは以下の通り。

―――バランスシートの圧縮は金利がうまく平常化したら実施すると表明したが、この日の利上げで金利はうまく平常化したといえるのか。

「金利の平常化については量的よりも質的に定義したい。その意味では金利の平常化をフェデラルファンド(FF)金利がどの水準になったかで示すことはできない。また、現在の金利水準だけでなく、我々の景気先行きへの自信やFF金利の見通しも踏まえる必要がある。これまでFF金利の誘導水準を数回にわたり引き上げてきた。年内と来年に追加利上げも見込んでいる。声明文で言及したように我々の予想通りに景気が拡大すれば、資産圧縮のプロセスは今年中に始めたい」

――FRB議長を2期目も務める可能性について大統領やそのスタッフと話したか。FRBメンバー3人の空席についてはどうか。

「来年2月の自分の任期が終わるまで任務を全うしたい。その後のことは大統領とは話していない。自分が2期目も務めたいかどうかはこの場では発言を控える。3人の空席については近い将来、指名がなされ上院で迅速に承認がなされることを望む」

――低インフレが長く続き、市場金利が低下傾向となっている。追加利上げの是非の議論や資産圧縮の先送りなどの可能性はあるのか。

「いつも強調しているように、金融政策にはあらかじめ設定した道筋はない。インフレ動向を注視していく。コアインフレなどいくつかインフレで弱い部分があることは確かだ。インフレは短期的には低水準を維持するとみられるが、堅調な労働市場を見る限り、じきに上昇していくだろう。向こう5年間にインフレ率が2%程度で推移するという目標を達成できると思う」

「ただ、インフレ指標には雑音も多いので最近の経済指標だけに過剰に反応するのは適切でない。とくに携帯電話使用料金の大幅引き下げなど最近の指標には特殊要因も多いからだ。3月のコアインフレ率は極めて低水準となり、前年比のインフレ上昇率をしばらく引き下げる結果となる。今朝発表された消費者物価指数(CPI)も様々な価格が弱さを示しており、引き続き注視していく必要がある。中期的な視点で金融政策を決定する過程では景気見通しや政策の計画を修正することもある」

「失業率は2001年以来の低水準となり、労働市場は堅調で景気の強さを示している。雇用増が多少鈍化しても、現在の労働市場の強さと緩めの金融政策を維持すれば、インフレ目標の2%を達成できる」

――これだけ長く低インフレが続いてきたのなら、これからは物価上昇率の上下変動に焦点を当てて金融政策を決定しようという動きはないのか。

「実質的な物価の動きや我々の予想値と実際の数字の食い違いにも注意を向けている。(物価と失業率の関係を示す)フィリップス曲線が極めて平たんになっている現在、インフレの失業率への即座の影響は小さく、長期的にみて平常な失業率を特定するのは非常に難しいものの、物価と失業率の関係は機能しているといえる」

「低水準の失業率が長く続いてきたおかげで賃金は低いものの多少上昇を見せている。インフレは様々な材料の影響を受けるが、今のところ上昇圧力の兆しは見えない。それを踏まえ、政策メンバーは失業率の平常値の予想をうまく引き下げることができた。この予想値4.6%は前回の予測よりも0.1%低い水準だ。現在の失業率はさらに低いが、それほど大きな違いはない」

――大統領就任式直後には、新政権の税制改革やインフラ投資への期待から消費者や企業の信頼感が上昇した。その後は政策実行が期待よりも遅れている。こうした政策の変更は過去6カ月間に景気見通しに影響を与えたか。

「税制改革や予算編成の実施見通しを遅らせたエコミストも多いが、企業や個人の信頼感は引き続き堅調といえる。実際に個人消費や企業の投資を見る限り、政策の変更が大きく影響した兆候は見えない。我々が情報を得ている企業関係者と話しても、彼らの景気への信頼感は高い。事業計画を変えたりすることなく、今は情勢を注視している段階だ」

――利上げを始めた2年前以降、金融市場の信用コストは低くなり、消費者や企業が資金を借り入れやすくなっている。これは金融市場がFRBの政策を受け入れていないということなのか。もっと利上げをする必要があるのか。

「金利の適正水準を決めるには様々な条件を考慮する必要がある。昨年以降、株式相場はかなり上昇し、借入市場も逼迫していない。直近のドル相場は多少下落しているが、2014年と比べるとかなり上昇した。こうした材料を踏まえた上で金融政策を決定している。ただ、我々は金融市場の特定の状況を目標にしているわけではない。あくまでもFF金利の目標水準の設定や雇用情勢、インフレ目標を設定するために、そうした金融市場を材料にしているのだ」

――低インフレで賃金や物価上昇が難しくなり、世界の中央銀行の信頼が損なわれるなどの最悪シナリオの可能性は。

「中央銀行、とくにFRBの信頼が損なわれることはない。インフレ期待率を示す様々な指標を見ているが、期待率は安定しており、インフレ率2%の目標に近い。TIPS(物価連動債)をベースにしたインフレ期待率は低水準が続き、直近やや上昇したが、これは市場参加者のインフレの推定値や期待値を直接反映しているとはいえない。リスクプレミアムや流動性プレミアムなどの他の材料も反映している。世帯調査でもインフレ期待率は低下しているのも事実だが、全般的にはインフレ期待が広範に低下していることはない」

「雇用は順調に伸び、緩めの金融政策の下で徐々に利上げを実施して政策を中立に向けている現在、景気は順調に拡大しているとみる。極端な利上げで雇用情勢の改善にブレーキを踏むつもりはないが、徐々に緩めの金融政策を排除していくのは賢明だと思う。世帯をみても企業をみても労働市場がきつめになっていることを示している」

「インフレ率が2%を下回っている現在、労働市場が現在のようなきつめの状況になっているのは適切だ。ただ、何の利上げもせずにある日突然、FF金利を急激に上げて景気後退を招くようなリスクは避けたい。景気と労働市場が堅調なうちに緩めの金融政策を適切なタイミングで解除していくのが適当だと思う。同時にインフレ率を2%に導くことも重要だと考える」

――エコノミストのグループが先ごろ、FRBに書簡を送り、労働市場はそれほど逼迫していない、もっと景気を拡大させるためには2%のインフレ率は適切ではないと主張したが。

「2%のインフレ目標を設定した2012年にいろいろな材料を踏まえ徹底的に議論した結果の決定だ。それ以来、いろいろな要件が出てきて、FF金利の中立水準も変更し、12年の時点よりも低く設定した。これは景気が弱くてゼロ金利が長引く可能性を踏まえたものだ。インフレ目標を高く設定した方がいいという向きもいるのは確かだ。将来的には再考の可能性もあるが、この目標は様々な証拠をもとに実施した極めて重要な決定だ」

「仮に再考するとすればインフレ目標値を上げる利益だけでなく、潜在的なコストも踏まえる必要がある。その意味で均衡のとれた決断をすることが重要だ。インフレ目標値を変えることは、将来にわたり世界の中央銀行が直面する最も重要な問いだ。この決定に際し、エコノミストの様々な研究を参考にしていきたい」

――FRBは長期的な政策金利水準を3%と予想しているが、市場は2%予想にとどまる。この差は問題になるか。

「予想値は中立的な政策金利と、どのように時間をかけて今後金利が上昇していくかの予測を反映したものだ。こうした見方は変化していくもので、不確実性はそれなりにある」

「我々は今後の金利の行方について不確実性がどれだけあるかということをチャートで示してきたが、先の予想になるほどその不確実性は高まる。不確実性は経済成長に影響を与える全ての衝撃を反映するものだが、実際には経済成長が中立金利にどれだけ影響を与えるかわかっていない」

「できる限り我々が今予測している数値を発表しようとしているが、不確実性は存在する。現在の中立金利は低いと思っているが、FF金利の上昇予測は中立金利が今後上昇していくという見方を反映している。不確実性については市場関係者が評価しようとするもので、我々ももちろん努力していく」

「市場が独立した考えを持つことは大切で、我々も市場関係者が経済成長の証拠をどのように解釈するかを理解しようとしている。なので、市場と我々の予測に差があることは悪いことではない」

――資産圧縮のプランに市場が激しく反応した場合は、プランを見直すことはあるのか。

「少なくとも14年ごろから繰り返し述べてきたように、バランスシートの圧縮は徐々に予測可能な形で進めていく。プランが固まるのに合わせて、(市場との)コミュニケーションも深めてきた。今日の発表は我々がどのように資産圧縮を進めていくかというプランの詳細を示す新たな一歩だと考えている。したがって、このプランが実行される時には、誰も驚くことはないだろうし、市場参加者はどのようにプランが実行されていくのか理解しているだろう」

「プランは市場に緊張をもたらさず、少しずつ予測可能な形で市場が順応できるように注意深く計画されるべきだと考える。私が期待しているのは、このプランを実行した時に市場の反応がとても小さくて済むことだ。加えて、このプランは今後見直されず、うまくいくと考えている」

――トランプ政権のメンバーがドッド・フランク法のせいで貸し出しが増えず、経済成長を妨げていると指摘しているが、同意するか。

「以前にも述べた通り、銀行に対する我々の規制が貸し出しの伸びや経済の成長に大きな影響を与えているとは考えていない。多くのデータが貸し出しの伸びは規制対応に苦しんでいる小さな地銀でも健全な状況にあることを示している。銀行が資本不足で弱まっている方が貸し出しが伸びず、銀行が強い方がお金は貸しやすい状況だと考える」

「財務省が12日に規制緩和案を示したが、非常に複雑な文書でまだ全てに目を通せていないため、コメントは控えたい。しかし、財務省案は自己資本の流動性やストレステスト、破綻処理計画、さらに安全で健全な銀行システムを持つことの重要性を明確に示していた。これは我々が支持している考え方だ。我々は規制を金融機関のサイズや複雑性に合わせて見直し、地銀に対する規制を和らげるものになると信じている。その方向に向けてこれまでもすでにいくつかの施策を進めてきており、財務省案もその方向に沿ったものだと思う」

――再投資政策の見直しは正確にはいつ開始するのか。期待している一定の条件があるのか。

「市場が準備できるように、細心の注意を払って資産縮小の方法を事前に伝えるべく努めている。今日の発表は、その努力の一環で、実際に着手する前に計画を明らかにしたかった。開始時期についてははっきり決めていないが、経済が予測通りに進展すれば、比較的早期に実施できるだろう」

――追加利上げと資産縮小の開始を同時に実施できるか。

「それは決めていない。経済の見通しと情勢評価にかかっている」

――米財務省がまとめた規制緩和案の報告書について、今後、規制変更を検討する上でどれくらい重視するか。特に(自己勘定での高リスク取引を原則禁止する)「ボルカールール」に関する提案をどう思うか。

「報告書は、ボルカールールの主要目的である自己勘定取引の制限を支持しており、その点を歓迎している。地域銀行や中小銀行の適応除外は、我々がすでに提案している。どのように規則を簡素化するかについては考えがあるが、検討したい。我々はこの5、6年間に非常に多くの規則を作ってきた。それを振り返り、生み出した負担を見極め、緩和策を見つけるのが財務省の見直しの主な目的であり、それには大いに賛同する。細部すべてに同意はしないが、提案には注意を払うし、すでに我々の見直しリストに入っている件も多い」

――将来の金融政策の道具としての量的緩和の教訓は。

「効果の規模については経済学者の間で意見が分かれるが、量的緩和は機能し、長期金利にいくらかの下向き圧力をかけた。利用価値のある道具の一つであることを学んだ。将来、経済が極めて弱まったときには、政策金利が主要な道具だが、ゼロ金利に近づいて政策金利の調整に制約がある場合には、バランスシート政策やフォワードガイダンスなども道具であり続けるべきだ」

――(現在の保有資産規模の)4兆5000億ドルがバランスシートの上限か、あるいは必要があればそれ以上を想定したか。

「その問題は議論していない」

――トランプ政権の職業訓練プログラムへの大幅な予算削減案をどう思うか。

「大統領予算についてはコメントしない。労働市場は逼迫しており、雇用者は適切な技能を備えた労働者の確保に苦労している。大企業は理想的な技能を持った人材を採用できないので、訓練への支出を増やしていると聞いている。それができない中小企業はコミュニティカレッジなどのプログラムに参加を希望しているそうだ。職業訓練は重要な分野であり、優先順位を置くに値する」

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