米の北制裁決議案が判明 石油禁輸、金正恩氏資産凍結も
【ニューヨーク=高橋里奈】米政府は6日、北朝鮮の核実験を受け、国連安全保障理事会の全15理事国に追加制裁の決議案を配布した。石油の全面禁輸のほか、北朝鮮からの労働者受け入れ禁止、繊維製品の禁輸など「最強の制裁」(米国のヘイリー国連大使)となる。北朝鮮の生命線を握るエネルギーと外貨の獲得手段を断つ狙い。金正恩(キム・ジョンウン)委員長の資産凍結・渡航禁止も盛り込み、核開発を許さない国際社会の断固たる姿勢を示す。11日に採決する。
日本経済新聞が入手した決議案は、原油や石油製品、天然ガスの禁輸が柱。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮へのエネルギー供給を断つ構えだ。石油の全面禁輸は北朝鮮の息の根を止めるに等しい措置で、供給源の中国とロシアの強い反発は必至。採決まで米中ロで水面下の交渉が続くとみられる。
このほか、北朝鮮の主要な外貨獲得手段である繊維製品の全面禁輸も定めた。衣料品の主な取引先は中国だ。
中国とロシアが最大の派遣先である出稼ぎ労働者の全面禁止も盛り込んだ。大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を受けた8月5日の追加制裁では、海外労働者の「新たな」受け入れ禁止にとどまった。最大の受け入れ先の中ロの要求で現状維持となったが、今回は全面的に禁止。国連加盟国は自国内で働く北朝鮮人労働者を送還しなければならない。中ロなどで出稼ぎ労働者として働く北朝鮮人は推計で最大14万7600人にのぼり、10億ドル超の外貨を稼ぐ。
渡航禁止・資産凍結対象の個人には、金正恩氏を含む朝鮮労働党の幹部ら5人を追加。資産凍結対象の団体には朝鮮人民軍や党機関、国営の高麗航空など7組織を加えた。金正恩氏や軍を制裁対象に加えたことで、北朝鮮のさらなる暴発を招く恐れがある。