2019年2月19日(火)

中ロがギリシャ接近、「地中海の要衝」 米欧は進出を警戒

2015/7/1付
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【モスクワ=古川英治、北京=山田周平】地中海の要衝であるギリシャの債務問題が危機的な状況に陥ったことで、地政学上の懸念も高まってきた。北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるギリシャの混乱はこの地域の安全保障問題に直結する。ウクライナ問題を巡り米欧への対抗姿勢を鮮明にするロシアのほか中国もギリシャに接近している。ギリシャと欧州連合(EU)の亀裂がさらに深まれば、戦略バランスが崩れかねない。

オバマ米政権はこの数カ月、EUに対し、ギリシャとの交渉促進を強く働きかけてきた。オバマ大統領は28日にメルケル・ドイツ首相と電話で協議し、ギリシャをユーロ圏にとどまらせることが「死活的に重要」との認識で一致した。米独はギリシャが債務不履行(デフォルト)状態に陥ることを想定し、世界経済への打撃だけでなく、安全保障上の影響も懸念している。

ギリシャは米国と旧ソ連(現ロシア)を軸とする東西冷戦時代から戦略上の要衝として機能してきた。NATOはギリシャのクレタ島などに軍事基地を置き、2011年のリビアのカダフィ政権空爆の際にはここから戦闘機を出撃させた。ロシアが黒海に面するウクライナ領クリミア半島を武力で編入し、同国への軍事介入を強めるなか、近隣に位置するギリシャの重要度は増している。

米欧はロシアの動きに警戒を強める。ロシアのプーチン大統領はギリシャのチプラス首相を4月と6月、ロシアに招いた。ウクライナ問題を巡る米欧の制裁などで不況に陥るロシアにはギリシャを支援する余力はないが、天然ガスをトルコ経由のパイプラインで欧州に運ぶ「トルコストリーム」構想への参加を働きかけ、米欧を揺さぶる。

ロシアのギリシャへの接近は地中海への進出を視野に入れた戦略の一環だ。キプロスでは2月、金融支援の見返りにロシア艦船に港湾施設を使用することを認めさせた。エジプトとも6月、軍事演習を実施した。

中国もギリシャを要衝と位置づける。中国国有の海運最大手、中国遠洋運輸(コスコ)はギリシャの最大港湾、ピレウス港のコンテナ埠頭の運営権を握り、港自体の買収を検討中。2月には同港に中国の軍艦が寄港した。中国が掲げる、同国と欧州を結ぶ陸と海の現代版シルクロード構想はギリシャや周辺を含む。

中国の李克強首相は29日、ブリュッセルで開いたEUとの首脳会議で「ギリシャとユーロ圏が今回の危機を乗り切るに当たり、中国は建設的な役割を果たすことを望む」と語った。ギリシャ経済が窮地に陥れば、豊富な資金を背景に影響力を強める用意があると示唆した格好だ。

中国とロシアは5月、地中海で初めて合同軍事演習を実施した。ロシアはギリシャのチプラス政権に対し、中国やロシアを主要メンバーとして創設する新開発銀行(通称BRICS銀行)への参加も打診した。中ロを含む新興5カ国の集まりであるBRICSは7月、ロシア南部ウファで首脳会議を開く。米欧への対抗を軸に結束する中ロがギリシャ問題でも協調するかもしれない。

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