2019年6月17日(月)

EU、FTA交渉加速 米保護主義に包囲網

2017/8/31 0:08
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【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)が日本との経済連携協定(EPA)の「大枠合意」を弾みに、中南米やアジア太平洋で自由貿易協定(FTA)交渉を加速させている。米トランプ政権が環太平洋経済連携協定(TPP)離脱を決めるなど保護主義的な色合いを強めるなか、「包囲網」を敷く形で自由貿易圏を広げ、国際貿易ルール作りで優位に立つ狙いがある。

「開かれた、公正な貿易を支持するという強力なメッセージを世界に向けて発信する」。7月6日の日本とのEPAの大枠合意を追い風に、EUのユンケル委員長が力を入れるのが、中南米と進める2つのFTA締結交渉の加速だ。

「年末に向けた通商分野の三大課題」。EU高官は日欧EPAの「最終合意」とともに、メキシコとのFTA再交渉と、ブラジルとアルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイの南米4カ国がつくる関税同盟の南部共同市場(メルコスル)とのFTA締結の「年内決着」を目指すと強調する。

米国と結び付きが強く米国の「裏庭」とも呼ばれてきた中南米とFTA交渉を加速することで、TPPからの離脱など内向き姿勢を強めるトランプ米政権へ政治的圧力をかける狙いだ。

メキシコは8月18日、米国との北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉が始まった。EUとの交渉が進展すれば、対米交渉を優位に進めるカードになるため、「年内妥結へ機は熟している」(EU高官)とEU側はにらむ。メキシコとEUは2000年にFTAを締結したが、古くなった協定内容を見直す改定交渉に16年から入っていた。

メルコスルは1999年にFTA交渉入りしたが、アルゼンチンの政治経済の混乱などに加え、欧州側でも南米からの安価な牛肉や砂糖の流入への懸念が根強く、交渉は長らく停滞してきた。「壁を築きたいという人がいる時代に、我々は大西洋をわたる橋を築くユニークな機会を手にしている」。EUで通商政策を担当するマルムストローム欧州委員は、米国への対抗をにじませつつメルコスルへ「反保護主義」での連携を呼び掛ける。

10月に開催予定のEUと南米の首脳会議の場なども活用しながら、12月にアルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれる世界貿易機関(WTO)閣僚会議を目標に合意を目指す構えだ。

アジア・太平洋地域では、今秋にもオーストラリア、ニュージーランドと新たにFTA交渉に入る方針。欧州委は9月24日のドイツ連邦議会選挙の終了後、速やかに交渉権限案をEU加盟国と欧州議会に提案する準備を進めている。

東南アジア諸国連合(ASEAN)とも地域間FTAの交渉再開へ準備に入ることで3月に一致済み。すでに交渉を終えたベトナムとシンガポールとのFTAの批准も急ぐ。大西洋と太平洋の双方から、米国を取り囲むように巨大な自由貿易圏の創出を目指す。

EUが日本とのEPA交渉で関税分野以上に重視したのが、自動車や医薬品などの安全基準など非関税障壁や、知的財産、投資・サービス分野などのルール作り。FTA網の拡大を通じ、グローバルな市場のルール作りで存在感を発揮し、米国や中国に対抗する狙いもある。

ただ欧州では、トランプ政権への対抗という「政治的な意志」ばかりが先走れば、中身の伴わない"軽量級"のFTA網にとどまりかねないとの懸念の声がくすぶる。年内決着を目指す中南米とのFTA交渉も、詳細部分は積み残した「政治合意」にとどまるとの見方が強い。EU側は南米からの牛肉輸入などセンシティブ(重要)品目の輸入自由化などにどこまで踏み切るか、自由貿易堅持の本気度が問われそうだ。

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