英、移民の社会福祉を制限 EUに承認要求へ

2014/11/29付
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【ロンドン=小滝麻理子】キャメロン英首相は28日、欧州連合(EU)からの移民に対する社会福祉の制限などを柱とする移民制限措置を導入すると発表した。来年の総選挙を控え、移民が職を奪ったり福祉予算を圧迫したりしているとする国内の不満に対応する狙いだ。今後EUと交渉して移民制限の権限を認めるよう求める考えで、認められなければ英国のEU離脱の可能性が高まるとした。

英国内ではEU離脱と反移民を掲げる英国独立党(UKIP)が急速に支持を伸ばしている。首相は新たな制限措置で支持を取り戻す考えだ。

キャメロン首相は演説で「移民は現代のオープンな英社会と経済にとって不可欠なものだ」と強調。「英国に来る移民の数を適正にコントロールし、社会福祉の悪用を防ぐための追加の手段が必要だ」と語った。

制限措置では、EU移民が英国で職をみつけても、4年間は公営住宅への入居や税額控除などの対象外とする。現在は就職後、数カ月後には申請できる。6カ月以内に職を探せなかった移民は国外退去を求めるほか、新規EU加盟国からの移民も制限する考えだ。

キャメロン氏は制限措置を実施するためにはEUとの条約の改正交渉が必要になると指摘。仮に交渉がうまくいかなければ、「いかなる選択肢も排除しない」と話し、EU離脱も辞さない考えをにじませた。

EUの報道官は同日「英国の措置について冷静かつ慎重に協議する」と述べた。ただ、ドイツのメルケル首相などは極端な制限策はEUが掲げる「移動の自由」の大原則を損なうと反発しており、議論は難航する可能性がある。

背景にあるのは増加の一途をたどる移民数だ。EU加盟国が一気に10カ国増えた2004年以降、当時のブレア政権が中・東欧8カ国の労働者を受け入れたこともあり、ポーランドを中心に約150万人の移民が英国に入国したとみられる。キャメロン政権は移民数の制限に取り組んできたが、27日発表された政府統計では、過去1年間で移民が実質26万人増えた。

英国は独仏などに比べても、移民に対する社会福祉が手厚いとされる。多くの移民が流れ着く仏カレー市市長は英国を移民にとっての「黄金郷」だとした。「ベネフィット・ツーリズム(失業手当など福祉目当ての移住)」も一部で問題になっている。

ただ、実際にはこうしたEU移民による社会保障の悪用とみられるケースはわずかだ。調査会社オープン・ヨーロッパによると、英国内で失業手当に対してEU移民からの申請は2.5%にとどまる。移民を労働力として活用してきた産業界からも過度の制限策を懸念する声が上がるのは必至で、議論は曲折する可能性がある。

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