2018年11月19日(月)

ASEAN経済共同体、31日発足 域内総生産300兆円

2015/12/30 19:43
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【バンコク=小谷洋司】東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟する10カ国が域内の貿易自由化や市場統合などを通じて成長加速を目指す広域経済連携の枠組み「ASEAN経済共同体(AEC)」が31日、発足する。域内人口は欧州連合(EU)を上回る計6億2000万人で、域内総生産が2兆5000億ドル(約300兆円)に達する巨大な経済圏が本格始動する。

東西冷戦下の1967年に地域協力機構として発足し、反共連合の側面もあったASEANはほぼ半世紀を経て、域内の一体化を進めるうえでの大きな節目を迎えた。

ASEANに加盟する10カ国の首脳は11月にクアラルンプールで、31日のAEC発足に向けた宣言に署名していた。

タイ素材大手のサイアム・セメント・グループ(SCG)は2016年1月、カンボジア南部カンポートの工場で年産100万トンの製造ラインを本格稼働させる。SCGはAEC域内のセメント市場でシェア3位の有力企業だ。ガン・トラクンフン社長は「3年後に首位を奪う」と意気込む。

SCGのカンボジア投資はAECによる域内経済の成長を先取りした動きだ。同様に域内で国境をまたぐ直接投資も増えている。ASEANの統計によると14年の域内直接投資は過去最高の243億7700万ドル(約2兆9000億円)で、04年の7.4倍に達した。

国境の障壁が取り払われればASEANを「単一の生産基地」と位置づけ、域内で分業する動きが一段と活発になる。

企業がAECの発足を見越し、人手に頼る作業が多い一部の自動車部品の生産を、タイから賃金が割安なカンボジアやラオスに移すといった動きが広がり始めている。

三菱マテリアルは15年初め、エアコンなどに使う温度センサーの新工場を人件費が比較的低いラオスの首都ビエンチャンで稼働させ始めた。中核部品のセンサー素子は隣国タイから持ち込み、完成品に仕上げる。

こうした動きを背景にAEC域内ではすでにモノの往来が盛んになっている。14年の域内貿易額は6083億ドルと、10年間で2.3倍に増えた。

インフラ整備の進展も物流を助ける。域外からの投資誘致には鉄道、道路といった輸送部門を中心にインフラの拡充が欠かせない。製造拠点で巨大市場でもあるAECの潜在力は魅力的で、隣接する大国、中国もインフラ建設に協力する形で接近を加速させている。

15年にベトナムのホーチミン、カンボジアのプノンペン、タイのバンコクの約900キロメートルが国際幹線道路「南部経済回廊」でつながった。12月にはラオスからタイのバンコクまで縦断する鉄道新線の起工式がタイで開かれた。この鉄道はラオスの北方にある中国南部の昆明までつながる予定だ。式典には中国の国務委員(副首相級)が出席した。今後は中国企業も加わり、同国側から多額の資金や技術が提供される見通しだ。中国にとって経済面での一体化を進めるASEANとの連携は大きな利益を得る機会になるとの判断がある。

経済制裁が緩和されたミャンマーと周辺国を結ぶインフラも改善している。15年8月にはタイ北部からミャンマーの最大都市ヤンゴンに向かう途中の山岳部に、片側2車線の迂回道路が開通した。かつての山岳道路は通行に3時間かかった。そのうえ1車線と狭く、陸の難所と呼ばれていた。

現在の積み荷はセメントや鉄鋼製品などの建築資材がほとんどだ。ミャンマー国内の工業団地の整備などで需要がある。ミャンマーに関税が残るが、18年には撤廃が見込める。郵船ロジスティクスはバンコク―ヤンゴン間の定期トラック便の運行を検討している。

東南アジアは日本企業にとって主要な投資先の一つだ。拡大するインフラ整備も大きな商機となる。ASEANでは30年までに3兆3000億ドルものインフラ投資が必要になるという試算も浮上した。例えば、日本貨物鉄道(JR貨物)と豊田通商は、製造業が集まるタイの南部経済回廊沿いでの鉄道輸送事業への参入を>目指している。

 ▼ASEAN経済共同体(AEC) 1993年に発効したASEAN自由貿易地域(AFTA)を原型とする経済連携の枠組み。2003年に域内自由化の対象をモノの貿易だけでなく、サービスや投資にも広げ、AECに発展させることで加盟10カ国が合意した。
 創設メンバーの5カ国にブルネイを加えた6カ国は品目数ベースで98%以上の域内関税を撤廃済み。遅れて加盟したベトナム、ミャンマー、ラオス、カンボジアの4カ国も18年までに全品目で域内関税をゼロにする計画だ。一方、国内保護のため輸入許可の厳格化など非関税障壁を高くする動きも加盟国にみられ、企業などには批判もある。
 域内でのサービス分野の開放やヒトの移動の自由化は遅れている。通貨統合や対外共通関税の導入まで踏み込んだ欧州連合(EU)に比べれば、経済の一体化に向けたペースは緩やかだ。加盟国を縛る法的な枠組みもないため、取り決めを実現するには各国の自主的な努力が欠かせない。

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