中国外交トップ訪米、トランプ政権との摩擦緩和探る
首脳会談へ地ならし
【北京=永井央紀】中国の外交担当トップである楊潔篪国務委員(副首相級)が27日、米国を訪問する。北朝鮮の核・ミサイル開発など外交上の懸案に加え、通商問題でも米中両国の摩擦が予想されるなか、トランプ米大統領が28日に初めて議会演説に臨むのを前に中国側の立場を改めて説明する。28日まで2日間の日程で、習近平国家主席とトランプ氏の首脳会談への地ならしを進める。
「中米両首脳は先日の電話協議で、密接に連絡を取り合い早期に会談しようと一致した」。中国外務省の耿爽副報道局長は27日の記者会見で、楊氏の訪米で首脳会談の調整が議題になるかとの質問にこう答え、議題の一つとの認識を示した。
世界の二大国である米中首脳は2月上旬に電話で協議したが、いまだ直接会談は実現していない。7月にドイツで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議で、初めて会談するとの見方が多い。
楊氏は駐米大使や外相を経て2013年から国務委員を務め、中米関係の中国側の仕切り役だ。王毅外相は先にドイツでティラーソン国務長官と会談したが、楊氏の中国指導部内での立場は王氏より上。習主席の首脳外交の先導役でもある。
中国側が目下、最も神経をとがらせるのは、北朝鮮問題だ。トランプ氏はロイター通信のインタビューで「金正恩(キム・ジョンウン)委員長の行いにとても怒っている」と批判した。中国では米国による北朝鮮の核施設への攻撃などへの警戒が強く、トランプ政権の強硬姿勢を少しでもなだめたい思惑がある。
中国が軍事拠点化を進める南シナ海では、米国との間に直接の火種を抱える。米軍は18日から同海で空母の哨戒活動を始めた。トランプ氏は「中国は為替操作のグランドチャンピオンだ」とも批判し、外交・安保、経済・通商の両面で中国への揺さぶりを強めている。
こうしたトランプ政権の外交姿勢に対し、中国は衝突を避け、協力しようと呼びかけ続けている。今秋に最高指導部が入れ替わる共産党大会を控え、外交面の混乱をなるべく避けたいためだ。19日からは国連制裁決議に基づき、北朝鮮からの石炭輸入を年内いっぱい停止した。米国に対し、中国もしっかり北朝鮮に圧力をかけると訴える「手土産」だとみられる。
楊氏は昨年12月にも訪米し、トランプ政権で大統領補佐官(安全保障担当)に指名されていたフリン氏と会談した。トランプ氏が中国大陸と台湾が一つの国に属するという「一つの中国」政策の見直しを示唆した直後で、中国にとって最も敏感な台湾問題を火消しするため、メキシコ訪問の途中で急きょ、米国に立ち寄った。
トランプ氏は2月上旬の習氏との電話協議で「一つの中国」政策を尊重すると表明。中国にとって最大の懸念はひとまず払拭された。楊氏は今回の訪米で、辞任したフリン氏の後任のマクマスター大統領補佐官らと会う見込み。トランプ氏が外交、経済の方針を示す議会演説を前に、米中間の隔たりをどこまで埋められるかが問われている。