米IBM、クラウドなど4700億円投資 新モデル構築 - 日本経済新聞
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米IBM、クラウドなど4700億円投資 新モデル構築

【ニューヨーク=稲井創一】米IBMは26日、投資家向け説明会を開き、新たな経営方針を発表した。成長余地の大きいクラウドコンピューティング事業などに40億ドル(約4700億円)の投資を実施する。アマゾン・ドット・コムやグーグルなど新興勢との競争激化などで業績の鈍化傾向が鮮明になっており、クラウド時代に対応した新たなビジネスモデル構築に向け本格的に動き出す。

「私はこの会社を再発明する」。バージニア・ロメッティ最高経営責任者(CEO)は冒頭でIBMの改革に向けた強い意気込みを示した。

昨年10月、ロメッティCEOは中期的な経営目標だった1株営業利益20ドルの断念に追い込まれた。売上高は2014年10~12月期まで、ほぼ3年間に相当する11四半期連続で減少、純利益も2年連続で減益した。IBMは再び成長軌道に乗ることができるか岐路に立っている。

苦戦の背景にはクラウドと呼ばれる新たなIT(情報技術)の普及がある。クラウド化は自社でハード機器やソフトを購入しなくても、割安にITサービスを利用できる技術で、IBMにとっては高性能のハード機器の販売低迷につながっていた。

26日、ロメッティCEOはクラウド分野を中核とする成長分野に40億ドル投資する方針を明らかにした。顧客のデータを大量に保管・処理できるクラウド専用のデータセンターの開設を急ぎ、クラウド事業の基盤を整える。同時に人工知能型コンピューター「ワトソン」を使ったデータ分析サービスをクラウド上で展開するなど付加価値の高いサービスを強化、出遅れ気味だったクラウド事業で巻き返しに出る。

ロメッティCEOはクラウドのほか、データ分析、携帯・ソーシャル、セキュリティーの合計4分野を重点事業に新たに位置づけた。18年までに4分野の売上高を14年比で1.6倍の400億ドルに引き上げる方針を示した。純現金収支の75~85%を配当や自社株買いなどに充当し株主還元も重視する。

不振のメーンフレーム(汎用機)など高品質のハード機器にも注力する方針も明らかにした。金融機関や政府・自治体などは重要なデータをクラウド化せず、自前のコンピューターで処理するニーズが引き続き強いためだ。「顧客は自前で管理するデータとクラウド化する部分と使い分ける」(クラウド事業を統括するルブラン氏)という。データの処理・分析速度を上げるため性能のカギを握る半導体の強化も続ける。

競合相手としてアマゾン・ドット・コムやグーグルなどインターネットをベースとする新興勢力が台頭。低価格を武器にしてIBMが得意としてきた大企業や官庁へも勢力を拡大している。IBMは一段のコスト競争力強化を迫られていると同時に、成長戦略をスピード感を持って実現することが課題になる。

米バーンスタイン・リサーチのサコナギ氏は「(IBMは)何よりも売上高の成長を見せることが必要」と話す。就任以来、最初の3カ月を除き売上高の減少が続いているロメッティCEOにとっては、経営手腕の真価が問われる局面にさしかかっている。

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