【重慶=多部田俊輔】北京市と広東省のインターネット情報弁公室は25日、中国インターネット大手の新浪、百度(バイドゥ)、騰訊控股(テンセント)に対し行政処分を下したと発表した。ポルノやテロなど当局が禁止する情報を放置したと判断した。罰金処分に加え、利用者の発信する情報の管理を厳しくするよう求めた。10月の共産党大会を控え、中国当局はネット言論の統制を強めている。
北京ネット弁公室によると、新浪の交流サイト(SNS)「微博(ウェイボ)」でポルノと民族対立をあおる情報、百度が運営する有力ネット掲示板「貼●(くちへんに巴、ティエバ)」ではポルノや暴力、テロなどの情報が確認された。新浪に対してはインターネット安全法の定めた最高額の罰金を決めたとしている。
広東ネット弁公室は、中国版LINE(ライン)と呼ばれるテンセントのスマートフォン(スマホ)向け無料対話アプリ「微信(ウィーチャット)」について、「公衆号」とよばれる公式アカウントで表明した意見などに当局が禁止する内容があったと指摘。ネット安全法の定めた最高額の罰金を決めた。
中国国家インターネット情報弁公室は8月、国家の安全を脅かす情報を流す利用者がいるとして新浪、百度、テンセントへの調査に着手すると発表。3社とも行政処分を受けたことで、利用者の発信内容の削除やアカウントの閉鎖を進める可能性がありそうだ。
処分を受けた3サービスの合計の利用者数は13億人以上に達する。利用者は重複するが、それぞれ異なる特徴を持ち、中国のネット世論の形成をけん引してきた。今回の処分で「当局は中国のネット世論の完全な統制に向けて大きく前進した」とネット企業大手幹部は指摘する。
中国ではネット世論が大きな力を持つ。報道機関が共産党の代弁者と位置づけられ、真実を知りたい人への影響力が限られるためだ。それだけに党は支配を揺るがす世論がネットで盛り上がることを警戒する。
6月には統制を強化するためネット安全法を施行した。米アップルがネット規制を回避する個人向けの仮想私設網(VPN)アプリの販売を停止。当局は個人向けVPNサービスの摘発を進めており、米グーグルなどの利用がさらに難しくなっている。