2019年2月16日(土)

米、南シナ海で中国けん制 対中強硬派に配慮
「航行の自由」作戦再開

2017/5/25 22:53
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【ワシントン=川合智之、北京=永井央紀】トランプ米政権が1月の発足後初めて、南シナ海で中国が埋め立てた人工島の12カイリ(約22キロメートル)以内に米軍艦船を派遣する「航行の自由」作戦を実施した。北朝鮮の核・ミサイル開発阻止で中国との連携に期待しつつも、中国による南シナ海の軍事拠点化を認めるわけではないとクギを刺した格好だ。中国外務省は「強烈な不満と断固たる反対」を表明し反発した。

複数の米メディアが24日、米軍当局者の話として伝えた。米海軍が南シナ海で同作戦を実施するのはオバマ前政権だった昨年10月以来、約7カ月ぶり。米海軍のミサイル駆逐艦「デューイ」が南沙(英語名スプラトリー)諸島のミスチーフ(中国名・美済)礁でパトロールを実施した。人工島周辺は中国の主張する「領海」ではないとの認識を行動で示した。

トランプ氏は4月の習近平国家主席との首脳会談で、北朝鮮への影響力を中国が行使すれば、米中の貿易問題などを不問に付すと交渉した。米メディアによると、米軍はトランプ氏の就任後に同作戦実施を3回提案したが、政府の許可がおりなかったという。中国への配慮だったとみられる。

ただ、米国内では作戦を行わない間に、中国が南シナ海で軍事拠点化を進めてしまうと警戒する声が強かった。シンクタンクの米戦略国際問題研究所(CSIS)の分析によると、中国は南シナ海に造成した複数の人工島に滑走路やレーダー、ミサイルや航空機を迎撃する防空設備を配備しているという。

ハリス米太平洋軍司令官は4月26日の下院公聴会で航行の自由作戦を「近く実施するだろう」と発言。今月に入ってから、与野党の上院議員7人が同作戦の実施を求める書簡をトランプ氏に送った。作戦実施に踏み切ったのは、こうした対中強硬派への配慮だったとの見方がある。

南シナ海を巡る中国の強引な姿勢が、米国の背中を押した可能性もある。中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)は今月中旬、南シナ海の紛争予防ルール「行動規範」の策定に向けた高官協議を開いた。だが、まとめた文書には「行動規範」を策定する目標時期はおろか、実効性を担保する法的拘束力の有無さえ明記されなかった。

対中強硬派の急先鋒(せんぽう)だったフィリピンは政権交代を機に態度を軟化。日米など国際社会の視線が緊迫する北朝鮮問題に注がれるなか、南シナ海が一時的に「空白地帯」となり、中国が実効支配を進めやすい状況が生まれている。

作戦実施を受け、中国外務省の陸慷報道局長は25日の記者会見で、海軍艦2隻が米艦に海域を離れるよう警告し、米側に抗議したと明かした。「米軍の行為は中国の主権と安全を損ね、偶発的な事故を起こしかねない」とも強調した。

ただ、中国は今秋の共産党大会を控え、対米関係の悪化は避けたいのが本音だ。トランプ氏にとっても、挑発行為を繰り返す北朝鮮を抑止するため、中国の協力が必要な状況は変わらない。過度に中国を刺激すれば、最重視する北朝鮮問題の解決が遠のく恐れもある。

米国側には配慮がにじむ。オバマ政権は15年秋以降、同作戦を計4回実施し、そのたびに公表してきた。だが今回、米国防総省の担当者は「作戦は定期的に実行する」と語るにとどめ、作戦実行を公にしなかった。今後も、国内情勢や中国の出方をにらみながら、時期や手法を慎重に探る展開になりそうだ。

来月初めには、米国や中国、日本などの軍・防衛関係者らが参加して、地域の安全保障問題を協議するアジア安全保障会議がシンガポールで開かれる。南シナ海問題も主要議題のひとつとなる見通し。同問題を巡る米中の発言に注目が集まりそうだ。

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