2019年9月21日(土)

仏潜水艦機密漏洩が波紋 豪「採用中止を」

2016/8/29 23:14
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【シドニー=高橋香織】フランス政府系造船会社DCNSから潜水艦の機密情報が漏洩し、同社潜水艦の採用を決めたばかりのオーストラリア国内では計画の中止を求める声が出始めた。技術供与を受けているインドなどにも波紋が広がる。同社は事態の収拾を急ぐため、容疑者不詳のまま背任の容疑で仏検察に告訴した。仏検察は予備的な捜査に入る見通しだ。

豪州紙オーストラリアンが先週、情報流出の事実を報じた。漏れたのは同社製のスコルペヌ型潜水艦に関する内部文書で、ステルス性能や通信システム、潜水能力などが記されているという。

DCNSは漏洩を認め「仏政府当局が調査し、顧客に与える損害などを明らかにする」との声明を出した。仏政府筋はAFP通信に「何者かが情報を盗んだ」との見方を示した。サイバー攻撃で情報が盗まれた可能性が取り沙汰されている。

DCNSは仏政府が60%超の株式を持ち、仏防衛システム大手タレスも出資する事実上の国有企業。潜水艦からフリゲート艦、空母の建造まで手掛ける。売上高の3分の1が海外向けだという。軍事分野は主要産業の一つなだけに、仏政府は「今後の輸出戦略に影響が出るのを懸念している」(仏国防省関係者)。

インド海軍は今後10年で潜水艦の保有数を4~5割増やす方針で、DCNSから技術供与を受けてムンバイの造船所で6隻を建造している。うち1隻が9月に進水する予定。政府は今回の問題を巡る調査を始めた。

インドは戦闘能力に関わる情報が仮想敵国とみる中国やパキスタンに渡る事態に神経をとがらせる。インドの安全保障体制が大きく揺らぎかねない。パリカル国防相は26日、調査に当たり「最悪シナリオを想定して動いている」と述べた。

豪州は4月、スコルペヌ型よりも大型のDCNS製バラクーダ型潜水艦12隻の採用を決めた。日本の三菱重工業や独防衛大手ティッセンクルップ・マリン・システムズなどと争った末、DCNSが約4兆3000億円規模の豪州との潜水艦共同開発事業を受注した。

オーストラリアン紙は「米国は独仏の機密情報保持に懸念を抱き、日本を選ぶよう豪州に求めていた。心配が的中した」と指摘した。「情報漏洩は重大な問題だ。解決するまで仏との交渉中止を検討すべきだ」(無所属のゼノフォン上院議員)などと、政府に再考を促す声も出始めている。

ただ採用計画が振り出しに戻れば、海洋進出を急ぐ中国を意識した次期潜水艦の導入時期が大幅に遅れかねない。ターンブル首相は「豪州が建造するのは全く別の型だ。サイバー攻撃対策は取っている」と、火消しに追われている。

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