クライスラー、ハッキング対策で140万台リコール
ソフト更新し遠隔操作防ぐ
【ニューヨーク=杉本貴司】米FCAUS(旧クライスラー)は24日、米国内でハッキング対策のため140万台をリコール(回収・無償修理)すると発表した。ソフトウエアを更新して、ハッカーが無線を通じて車の操縦を乗っ取るような事態を防ぐ。米国ではネットにつながる「賢い車」が普及する一方、安全性への関心も急速に高まっている。ハッキング対策を目的とした初の大規模リコールとなる。
米国では著名ハッカーがネットにつながる車の安全性に警鐘をならす目的で、米専門誌と共同でクライスラー車を乗っ取る実験を行い、ネット上で公開したことが話題となっている。クライスラーが使う専用無線回線「Uコネクト」から車の頭脳であるコンピューターに侵入して、外部からエンジンを切ったり、ワイパーを動かしたりした。遠隔操作でハンドルを動かしたり、加減速させたりできるという。
クライスラーはこのような「遠隔操作による犯罪行為」を未然に防ぐ目的で、すでに改良ソフトウエアを配信していたが、社会的な関心が高まっていることから自主的リコールに切り替えた。同社によると現時点でハッキングによるけがなどはないとしている。
対象となるのはSUV(多目的スポーツ車)「ジープ・グランドチェロキー」や主力セダン「クライスラー300」など、Uコネクトの機能があり8.4インチスクリーンを搭載した車種。
ハッカーによる乗っ取り映像の公開を受けて、米議員は対策法案を議会に提出している。米自動車3社は各社とも専用回線を持っており、今後はクライスラーと同様の対応に追われる可能性がある。ただ、ソフトを更新してもハッカー対策はいたちごっこになることが多く、「賢い車」の開発に力を入れる世界の自動車大手にとって新たな課題となりそうだ。