ロシアのリオ五輪参加、競技ごとに判断 IOC決定
【ジュネーブ=原克彦】国際オリンピック委員会(IOC)は24日に緊急理事会を開き、国家主導のドーピングが問題視されるロシアのリオデジャネイロ五輪への参加について、競技ごとの国際連盟に判断を委ねることを決めた。薬物の使用状況は競技により濃淡があると判断し、全面的な参加禁止処分は見送った。今後は各国際連盟の決定が焦点になる。五輪開幕を8月5日に控え、一部競技では混乱が避けられない。

IOCのバッハ会長は理事会後の電話による記者会見で「組織での連帯責任と、個人が持つ権利のバランスを取った」と説明した。緊急理事会ではリオ五輪からロシアを全面除外する処分は見送り、出場の可否の判断は各国際連盟に委ねることを決めた。
ただ、出場には厳しい条件を付けた。過去にドーピングを使用して制裁を受けた選手の参加は認めないとした。スポーツ仲裁裁判所(CAS)の専門家の支持を得たり、参加が決まった後も規定の検査以外に検査を受けたりすることを求めた。
ロシアの五輪参加には米欧などが強く反発し、14カ国の反ドーピング機関は連名でバッハ会長に全競技でロシアを資格停止にするよう求める文書を送っていた。IOCの決定に対しては米欧などから批判が出そうだ。

今後は陸上を除く27競技の各国際連盟が結論を出す。リオ五輪の開催が近づいており、急な対応を迫られることになる。
ロシアは既に参加禁止が決まった陸上のほか、レスリング、柔道、体操などで多くのメダルを獲得してきた。世界反ドーピング機関(WADA)報告書で不正が指摘されなかった体操は国際連盟が早くからロシアの参加を認めるよう要請。国際柔道連盟会長も全面参加禁止に反対する声明を発表している。
一方、08年北京と12年ロンドンでの五輪で多くのドーピングが発覚した重量挙げは6月、ロシアなど3カ国の資格を停止する準備を始めている。
ロシアの薬物使用では2015年11月、WADAが陸上競技で組織ぐるみの不正があったと指摘、国際陸連が同国選手を五輪などの国際大会に参加させないことを決めた。ロシア選手68人がCASに取り消しを求めたが、訴えは却下された。
5月には同国の反ドーピング機関の幹部が過去の不正を米国メディアに暴露した。WADAはパラリンピック競技を含む30の競技で国家主導の薬物使用と隠蔽が行われていたと報告し、ロシアをリオ五輪に参加させないよう勧告した。
IOCは19日の緊急理事会でロシア参加の是非を協議。いったん判断を見送っていた。
五輪憲章は制裁の取り決めを記した59条で、IOCが五輪憲章や国際的な反ドーピング規則に違反した国のオリンピック委員会の資格を停止できると定めている。人種差別政策を理由に南アフリカの資格を停止した例などがあるが、薬物問題では前例がない。
ロシア側は一貫して政府の関与を否定。陸上界の問題が表面化してからは検査強化などの対策を公表し、22日には外国人を含む独立検査機関を設けるなど追加策も打ち出した。五輪からの締め出しについては「西側諸国によるスポーツへの政治介入」と批判してきた。
IOC決定骨子、参加に厳しい条件
○ロシア選手の五輪参加は競技ごとの国際連盟が個々に判断
○各連盟の決定は国際的な反ドーピング規則と6月の五輪サミットでの合意に従う
○過去に薬物使用で制裁を受けた選手は参加を認めない
○参加にはさらにスポーツ仲裁裁判所の専門家の支持を必要とする
○ロシア選手は追加の検査を受ける
○規律委員会の報告内容によっては追加の制裁もあり得る