2018年11月16日(金)

デジタル201品目の関税撤廃、日米欧や中韓合意 WTO
日本、1600億円負担減

2015/7/25付
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【ジュネーブ=原克彦】世界貿易機関(WTO)の情報技術協定(ITA)に参加する日米欧や中国、韓国など約50の主要国・地域は24日、201品目のデジタル製品について、輸出入する際の関税を撤廃することで合意した。デジタル複合機やカーナビ、磁気共鳴画像装置(MRI)などが対象に加わる。日本企業が得意とする分野が多く含まれており、こうした製品の輸出拡大につながりそうだ。

通商協定の一つであるITAは、デジタル製品の関税撤廃をめざして1997年に発効した。現在はパソコンや携帯電話、プリンターなど約140品目が対象になっている。その後に普及した情報機器には対応しておらず、2012年から対象品目を増やす交渉が始まっていた。

24日までに、台湾を除くすべての主要国・地域が201品目の追加リストに同意する意思を示した。台湾だけは、リストから得意分野の液晶パネルを外したことに反発して同意していない。

他の参加国・地域は仮に台湾が新しいITAへの参加を見送っても、現在のリストを協定にする方向で調整する。

追加品目にはゲーム機やデジタルビデオカメラのほか、液晶パネルに使う偏光材料製のシートや半導体用フォトレジストも含まれる。各国・地域は9月から各品目について関税撤廃までの期限を協議し、12月にナイロビで開くWTO公式閣僚会合までに最終合意したい考えだ。16年7月の発効をめざす。

日本の産業界にとっては輸出の追い風になる。今回追加した品目の日本から海外への輸出額は年間で約9兆円にのぼる。日本企業が負担する関税は約1600億円減る見通しだ。環太平洋経済連携協定(TPP)が締結した場合よりも、電機業界が支払わなくて済むようになる関税の額は大きいとみられる。日本は工業製品にほとんど関税をかけておらず、輸入面で受ける不利益は小さい。

01年に始まった多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)の停滞を受け、世界の通商政策は2国間の自由貿易協定(FTA)や、TPPのような地域間の自由化交渉に軸足が移っている。ただ、企業にとっては生産拠点や輸出先を問わず効果を得られる点で、世界共通のルールの方が便利だ。

ITAの対象品目を増やす交渉は13年、中国が医療機器産業の育成などを理由に多くの品目の除外を求めたため、いったん中断した。14年には米中が追加品目で合意したが、液晶パネルを除外したため、この分野に強い韓国と台湾が猛反発して再び合意を断念した。今回の交渉は韓国が早くから液晶パネルの追加を断念したことで、一気に合意に向けて動いた。

日本企業の期待は大きい。MRIで世界シェア5位の日立製作所は「輸出時に関税が安くなることで、製品を海外でより低価格で提供できるようになる」とみる。パイオニアはカーナビゲーションシステムのほとんどを東南アジアに集約して欧米などに輸出しており「今回の合意は利益増に寄与する」と歓迎する。

WTOが本部を置くジュネーブでは、有志国が環境物品やサービスの貿易自由化に向け協議を進めている。ドーハ・ラウンドのように全加盟国・地域の合意を必要とする交渉から、ITAのように有志国で合意した内容を世界へと広げる複数国間交渉が加速するとみられている。

 ▼世界貿易機関(WTO) 関税および貿易に関する一般協定(GATT)を発展的に解消し、1995年に発足した。約160カ国・地域が参加。モノだけでなく、サービスや知的財産権を含む世界貿易を統括し、裁判に似た紛争処理制度を採用している。
 2001年にカタールのドーハで始まった多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)は全参加国で関税の削減・撤廃などを話し合っているが、決裂を繰り返してきた。全体の交渉が停滞する中で、情報技術協定(ITA)のように特定の分野で有志国が合意を目指す協定(プルリ合意)の重要性が増している。

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