2019年2月16日(土)

トルコ、「イスラム国」初空爆 「寛容」から方針転換

2015/7/24付
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【イスタンブール=佐野彰洋】トルコが、過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)との戦いに本格的に参加した。トルコ軍は24日、シリアとの国境沿いの拠点3カ所を初めて空爆した。これまで米国主導の対IS有志連合の軍事行動と距離を置いてきたトルコだが、自国の空軍基地の使用を米軍に許可したことも判明した。中東地域でISとの新たな対立の火種が生じた形になり、地域の情勢不安に拍車をかけかねない。

「作戦は成功し、今後も継続する。わずかな脅威でも最大の反撃をする」。空爆後に開かれた会見で、ダウトオール首相は強調した。トルコ軍機による空爆は24日午前4時(日本時間同日午前10時)ごろに実施された。ISの司令部など3つの標的を攻撃した。地元メディアは攻撃がトルコ領空からで、少なくとも35人を殺害したと報じた。

トルコはシリアと約900キロメートルにわたって国境を接する。トルコはシリアのアサド大統領の退陣を強く求め、アサド政権と戦うためトルコ経由でシリアやイラクのISをはじめとする武装組織に向かう外国人戦闘員の越境を黙認していたとの批判を浴びてきた。ISによるトルコ国内でのテロへの懸念もあり、空爆には踏み切らなかった。

しかし22日に、エルドアン大統領とオバマ米大統領が電話会談し、戦闘員流入問題などについて協議した。その直後、米国が以前から求めていたトルコ南部、インジルリク空軍基地の使用をトルコ政府が許可していたことが明るみに出た。

米軍などは、ISの本拠地とされるシリア北部のラッカから1000キロメートル以上離れた基地も空爆の拠点に使用してきた。しかし、インジルリク空軍基地とラッカの距離は約350キロメートルと近く、米軍などの作戦能力の向上は確実だ。大手ミリエト紙のコラムニスト、ニハット・アリ・オズジャン氏は「地域におけるトルコの立場を根本的に変える決断だ」と指摘する。

トルコの方針転換の契機となったのは、20日に発生した南東部スルチでのISによるとみられる自爆テロだ。ISが破壊したシリア北部のクルド人の町、アインアルアラブ(クルド名コバニ)の復興活動に参加予定だった大学生ら32人が死亡、約100人が負傷した。

ISはシリア北部でシリアのクルド人勢力、民主連合党(PYD)の攻勢を受け、要衝からの撤退を強いられている。20日のテロはPYDへの報復と、米軍へのインジルリク基地の使用許可を検討していたトルコ政府への警告との見方もある。

23日には、南部キリスでシリア側のIS支配地域から銃撃があり、国境警備にあたっていた兵士1人が死亡、2人が負傷した。トルコ軍は戦車の砲撃などで反撃した。トルコ軍は戦車部隊や兵員をシリア国境に集めている。

ISへの対処は、トルコの内政問題にも直結する。「エルドアン大統領は外国人戦闘員の流入などでISの台頭を許し、PYDなどへの支援を渋った」として国内のクルド人の離反を招いた。6月の総選挙で2002年から単独政権を維持した公正発展党(AKP)が過半数割れする一因にもなった。

トルコでは連立政権の樹立を巡る協議が進まず、ダウトオール首相率いる暫定内閣による国政のかじ取りが続く。空爆を受け、通貨リラは24日、約40日ぶりに一時1ドル=2.75リラまで下落した。トルコ中央銀行は急きょ、銀行向けに貸し出すドル資金の金利を引き下げる介入策を講じるなど、経済面での影響も懸念され始めた。

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