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米企業、オバマ税改革に見切り ファイザー「節税合併」が波紋

【ワシントン=河浪武史】米製薬大手のファイザーとアイルランドの同業アラガンが23日に発表した「節税狙い」とみられる合併が波紋を広げている。米財務省が節税目的での海外企業の買収を規制すると公表した直後だったからだ。政権を挑発するかのような合併劇は、法人税率の引き下げを実行しないオバマ政権を企業が見切った表れと受け止められている。

今回の合併は製薬世界2位のファイザーによる事実上の買収で、総額1600億ドル(約19兆7千億円)に達する。

両社は株式交換方式で合併し、規模の小さいアラガンの下で事業統合する形を取る。米国は連邦法人税率が35%と主要国で最も高い水準にあるが、アイルランドは12.5%と低いからだ。本社をアイルランドに置くことで、年約20億ドルの節税効果があるとされる。

ファイザーは14年にも、税率の低い英国の同業に買収を提案したことがある。製薬世界1位のノバルティスが本社を置くスイスのバーゼルは法人税率が20%強だ。主力品の特許切れや後発医薬品メーカーとの競合が激しくなるなか、法人税率の高い米国に本社を置いたままでは世界的な競争に勝てない――。そんな危機感がファイザーの背中を押したようだ。

節税を狙ったM&A(合併・買収)構想は米国で相次いでいる。ドラッグストアチェーンのウォルグリーンや半導体製造装置のアプライドマテリアルズなども、企業買収や合併を仕掛けて本社を低税率の欧州に移転しようと試みた。

海外移転をめざす米企業が増えているのは「オバマ米大統領の税制改革構想を見切ったからだ」(税務に詳しい米法曹関係者)という。オバマ氏が前回12年の大統領選で掲げた法人税率を28%まで下げる公約は、実現のメドが立っていない。

米財務省は19日、買収先企業と関係のない第三国に節税目的で本社を移せないようにする規制策を発表した。しかし、アラガンの所在地であるアイルランドに本拠地を移す今回のケースは阻止できない可能性が高い。

「米国の納税者が貧乏くじを引く」。来年11月の米大統領選の民主有力候補、ヒラリー・クリントン前国務長官は23日の声明でファイザーを強く批判した。一方で共和党候補は法人税率自体の引き下げを訴える。税制改革は米大統領選の争点にも浮上してきた。

昨夏にスイスのドラッグストアを買収したウォルグリーンは、欧州への本社移転自体は断念した。当時はオバマ政権の圧力に屈したとみられ、投資家の失望売りで直後の株価は1割以上も下落した。米企業は政権と株主の板挟みとなってきたが、オバマ大統領の任期が終盤にさしかかり、足元では政権を見切る動きが鮮明になっている。

日本は安倍政権が法人実効税率の引き下げを成長戦略の柱の一つに掲げている。16年度に31.33%以下に下げることは決まっているが、経済界が求める20%台への引き下げ時期は定まっていない。日本の法人税改革が遅れれば、日本企業にも株主からの圧力がじわりと増す可能性もある。

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