2019年5月20日(月)

EU、難民流入を抑制 国境検問厳格化へ

2016/9/25 0:40
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【ベルリン=赤川省吾、イスタンブール=佐野彰洋】欧州が難民政策の軸足を「流入抑制」に移しつつある。受け入れに積極的だったドイツでも反難民機運が台頭。24日に開かれた関係10カ国の首脳会議は欧州連合(EU)の外周部の国境検問を厳しくすることで大筋合意した。各国は有権者を意識して軌道修正を図るが、どこまで強硬策に踏み込むのか域内に温度差が残る。

ウィーンで開かれた首脳会議にはドイツやオーストリアのほか、難民の移動ルート上にあるバルカン半島諸国が参加。トルコと国境を接するブルガリアや、EUに参加していないセルビアなども加わった。

会議ではEUの外周部にあたるブルガリアが各国の応援を得て国境警備にあたる人員を増やすことを再確認した。「バルカンルート」と呼ばれる難民の移動経路を完全に遮断するためだ。

議長役を務めたオーストリアのケルン首相は会議後の記者会見で「(人材の供給など)各国の協力が不足している」と語り、早急に警備体制を整えるべきだとの考えを示した。「(このルートで)違法な移動はできないということを示すべきだ」と出席したトゥスクEU大統領も語った。

昨秋にドイツが難民の大量受け入れを決めてから丸1年。今回の会議の議題に派手さはないが、欧州が政策を転換したのは明らかだ。「1年前のような無秩序な移民流入を許してはならない」。今回の会議に先立って開かれた16日のEU首脳会議でも、こんな表現が共同宣言に盛り込まれた。

政治情勢の変化が背景にある。ドイツのメルケル首相は有権者の厳しい批判にさらされ、地方選での与党退潮につながった。オーストリアでも反難民感情が強まって極右政党が勢いづく。

もっとも問題の抜本解決からはほど遠い。EUは中東やアフリカを資金支援し、貧困から欧州を目指す人を減らそうと試みる。一方で「バルカンルート」を遮断し、ギリシャへの密航者をトルコに送り返そうとしているが、機能していない。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、トルコからギリシャに渡る移民・難民の数は足元では毎月数千人。1~3月の計15万人から急減したが、まだ流入は続く。「望んだようにはなってない」とケルン首相は記者会見で認めた。

バルカン半島には多くの難民が取り残され、「解決策が見つけられるか疑問に思う」(セルビアのブチッチ首相)との悲観論が漏れる。19日にはギリシャ東部レスボス島の難民キャンプで大規模な火災が発生した。難民申請の審査が長引き、いら立ちを募らせたキャンプ住民による放火が原因とされる。今回の首脳会議では難民審査を早めるべきだとの声も出た。

域内各国で難民を分散して受け入れるというEU構想もかけ声倒れだ。批判の急先鋒(せんぽう)に立つハンガリーは10月2日、受け入れの是非を国民投票で問う。

戦火を逃れてきた難民を手厚く保護するという旗は降ろしたくないが、大勢の人が流れ込むのは好ましくないという矛盾した考えを欧州は抱える。受け入れ人数に上限を設けるべきか。難民として認められない人をどう強制送還するのか。EUは議論を深める構えだが出口は見えていない。

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