2019年6月20日(木)

米ファイザー、成長M&A頼み アラガンを事実上買収

2015/11/23 23:20 (2015/11/24 0:15更新)
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【ニューヨーク=高橋里奈】米製薬大手のファイザーによるアイルランドの同業アラガンの事実上の買収は、自前での規模拡大が望みにくくなった環境の変化が背景にある。各社は主力品の特許切れが相次ぎ、後発医薬品メーカーとの競合も激化している。M&A(合併・買収)により新薬候補獲得を含めて製品ラインアップを拡充して局面の打開を図る。今回の買収のもう一つの目的とされる租税回避を巡っては米当局が規制強化に動く中で強行突破を図る格好だ。

両社の発表によると、アラガン株の評価額は363.63ドルと10月28日の株価に比べ約3割上乗せした水準。アラガン株主は1株につき新会社の株式11.3株を、ファイザー株主は同1株を受け取る。買収は2016年下半期に完了する予定。新会社の最高経営責任者(CEO)にはファイザーのイアン・リードCEOが就き、社長にはアラガンのブレント・サンダースCEOが就任するとしている。

ファイザーはこれまでもM&Aで事業成長の壁を切り抜けてきた。2000年のワーナー・ランバート、03年のファルマシア、09年のワイスと大型M&Aを繰り返した。今年9月には後発医薬品7位の米ホスピーラの買収を完了した。収益を支えてきた高脂血症治療薬「リピトール」も元はワーナーの開発品だ。この手法は「ファイザーモデル」と呼ばれてきた。

ファイザーの医療用医薬品の売上高はリピトールの特許切れが始まった11年と比べ100億ドル以上減り、14年にはノバルティス(スイス)に業界首位を奪われた。自社の有望な新事業が少ない中、世界各地に抱える営業部門を支えるためにも規模拡大を追わざるを得ない。今回もM&A頼みで首位に再浮上する。アラガンも米アクタビスが旧アラガンを買収し15年に社名を変更した。

もう一つの狙いは租税回避だ。形式上は規模の小さいアラガンがファイザーを買収する格好をとる。本拠を法人税率が35%と先進国で最高水準の米国から12.5%のアイルランドに移すことで節税を図る。ファイザーのリードCEOもかねて税率が高い米国から国外に本社を移し、合法的に租税回避を実現する狙いを示唆してきた。

製薬業界では、カナダのバリアントが米サリックス・ファーマシューティカルズを111億ドルで買収するなど大型のM&Aが相次いでいる。調査会社ディールロジックによると世界の製薬業界のM&A総額は15年に3千億ドル近くに達し、過去最高を更新する勢いだ。

米調査会社IMSヘルスによると、世界の医薬品市場は20年に1兆4千億ドルと現状から約3割拡大する見通し。日米欧など先進国と新興国の格差が縮まり、中国、インド、ブラジル、インドネシアなどの需要の伸びが支える。同時に、ファイザーなど欧米製薬大手が収益源としてきた米国では後発薬が3割以上増える見込みで、各社は収益モデルの転換を迫られる。

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