米、サイバー防衛部隊を大増強 6200人規模に
民間と連携、シリコンバレーに拠点
【ワシントン=川合智之】米国防総省は22日、中国などからのサイバー攻撃から米国のコンピューター網を守るための新戦略を発表した。IT(情報技術)企業などが集まる米カリフォルニア州シリコンバレーに拠点をつくり、民間企業の協力を得てサイバー攻撃を防ぐ。軍のサイバー部隊の規模は、2016年までに現行の約3倍の6200人に増強する計画だ。
現行のサイバー戦略は11年につくられ、今回が初の改定となる。米軍サイバー部隊の任務として攻撃への抑止力の向上を柱に掲げた。またサイバー空間の軍事作戦で同盟国と協力する方針も示した。外交や経済制裁などあらゆる手段で脅威に対抗する。
カーター国防長官が23日、米カリフォルニア州のスタンフォード大学で演説し、国防総省がIT企業やセキュリティー企業などと連携する方針を表明する。カーター氏は米フェイスブックのシェリル・サンドバーグ最高執行責任者らとも会談し、サイバー対策をテーマに意見交換する予定だ。
シリコンバレーに新設する拠点には官民の専門家らが常駐。協力してサイバー対策技術の開発や人材の確保などを手掛ける。また安全保障に関わるベンチャー企業への国防総省からの投資や、将校の企業派遣なども検討する。軍にはサイバー作戦を担う即応部隊も組織する。
国防総省がサイバー対策にあたり産学連携を拡大するのは、拡大の一途をたどる攻撃に対し、米軍だけでは対応しきれないためだ。ハッカーの技術は日に日に高まっており、米国の技術的な優位は崩れつつある。これに対抗できる優秀な人材はセキュリティー企業や防衛産業、IT企業などが抱えている。国防総省はこうした民間の人材や情報を活用し、サイバー空間の脅威に立ち向かう。
オバマ米大統領は2月、スタンフォード大で演説し、軍や情報機関などが持つサイバー攻撃の情報を一元化する新組織を設立して官民が情報共有できるようにする方針を表明していた。16米会計年度(15年10月~16年9月)の予算教書で、サイバー攻撃対策の強化に140億ドル(約1兆7千億円)を計上するなど、サイバー攻撃は「国家安全保障への挑戦だ」(オバマ氏)とみて警戒を強める。
ヘーゲル前国防長官は14年の演説で「私が話している間にも国防総省は敵から5万回のサイバー攻撃を受けている」と述べるなど、脅威は年々拡大している。
国家が関与する大規模なサイバー攻撃も相次ぐ。米政府は昨年11月に発覚したソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)への攻撃に北朝鮮が関与したと断定。中国人民解放軍が米企業のシステムに侵入して機密情報を盗んだとして、米司法省は当局者5人を訴追した。
米政府はロシアやイランなども米国へのサイバー攻撃に関わっているとみて、国際連携による対抗策を検討する。中東やアジア、欧州の同盟国と協調してサイバー防衛作戦を展開する。
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