英EU離脱「金融市場に打撃」 FRB議長、ドル高警戒
【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は21日、米上院での議員との質疑で、英国が欧州連合(EU)からの離脱を決めた場合は「投資家がリスク回避に動き、ドル高など金融市場に打撃をもたらす」と強い懸念を表明した。焦点の追加利上げは「労働市場に減速感があり、慎重姿勢が適切」と述べ、経済情勢を当面見極める考えを示した。
イエレン氏は米上院銀行委員会に半期経済報告書を提出し、冒頭証言と質疑に臨んだ。議員から英国リスクを問われ、23日の英国民投票でEU離脱が決まれば「先行きの不透明感から(投資マネーは)安全資産へと逃避して、ドルなどの安全通貨を高騰させるだろう」と警戒感を示した。
そのうえで「2014年の中盤以降、ドルは主要通貨に対し20%も上昇しており、輸出や企業収益、製造業の雇用に悪影響をもたらしてきた」とも指摘。英国民投票後にドルが一段高となれば、米経済を下押しするリスクがあると語った。
FRBが重視する雇用情勢については「足元で減速したようだ」と述べた。5月の雇用統計は就業者の増加幅が5年8カ月ぶりの低水準に落ち込んだためで「パート労働者の比率が高止まりするなど、多くの指標は雇用環境の緩みを示している」と述べた。
そのうえで追加利上げは「慎重に対処していく」と表明した。FRBは年内2回の追加利上げを中心シナリオと掲げているが、イエレン氏は具体的な引き締め時期に言及するのも避けた。7月下旬に開く次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)での判断が焦点となるが、市場では利上げは9月以降との見方が強い。
米経済全体については「家計支出が着実に改善しており、4~6月期は急回復が見込めそうだ」と強調した。ただ、海外経済の停滞や米国の設備投資の低迷など「かなりの不確実性が残っている」とも指摘した。