米、マレーシア国営企業の資産凍結へ 首相親族の不正指摘

2016/7/21 20:28
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【シンガポール=吉田渉】米司法省は20日、マレーシアの国営投資会社「1MDB」の関係者が同社の資金を横領したと断定し、不正に得た資金で購入した資産10億ドル(約1060億円)超の差し押さえを求めて連邦地裁に提訴した。首謀者にはナジブ首相の親族が含まれ、同首相が資金を受け取ったとも示唆した。不正への関与を否定してきたナジブ政権への打撃となるのは必至だ。

司法省が公開した訴状によると、横領は1MDB設立直後の2009年に始まった。社債などを通じて調達した資金を実態のないペーパーカンパニーなどに支払い、複雑な経路を使って資金を洗浄して関係者の口座に流し込んだ。不正は少なくとも13年まで続き、横領額は合計で35億ドルを超す。

差し押さえ対象は米国内の資産や米金融機関に預けた資金が中心だ。司法省は国家が絡む腐敗を取り締まっている。

訴状は「複数の関係者が首謀した」と断定した。中心人物としてマレーシア人実業家のジョー・ロー氏と、その友人のリザ・アジズ氏らの実名を公表した。アジズ氏はナジブ首相の妻ロスマ氏と前夫の間に生まれ、首相の義理の息子にあたる。

首謀者らは横領した資金を使って高級不動産や美術品などを買いあさっった。アジズ氏は著名俳優レオナルド・ディカプリオ氏主演の映画「ウルフ・オブ・ウォールストリート」の制作に資金を充てた。この映画は投資詐欺を働いた株式仲買人が題材だ。

訴状には「マレーシア当局者1」と称する人物が複数回登場した。この人物の口座に資金の一部が何度も振り込まれたという。「当局者1」はアジズ氏の親族で1MDBに強い影響力を持つなどと表現した。ナジブ首相は全条件に当てはまる。

シンガポール金融通貨庁(MAS、中央銀行に相当)は21日、不正に関与した疑惑のある人物の銀行口座を凍結したと発表した。1MDBの疑惑を巡ってはスイス当局も調査を進めている。

ナジブ首相の報道官は「マレーシア当局の捜査で犯罪はないと結論が出ている」と反論した。ナジブ首相は昨年夏に「1MDBから7億ドル近い資金を受け取った」との疑惑が浮上したが、同国当局は「中東の王族からの献金」として捜査を終結している。

マレーシア国内では首相への批判の声が出ている。ナジブ首相と対立するマハティール元首相は同日、「マレーシア人はナジブ首相を退陣に追い込むべきだ」と話した。野党の有力議員は「世界の笑いの種となった」と批判した。

もっともナジブ首相がすぐに窮地に陥るとは考えにくい。同氏の地盤は昨年の疑惑を経てむしろ強まっている。疑惑を巡る報道を封じ込め、自身に批判的な有力者を相次ぎ更迭し、強権的な手法で与党内の支持を固めた結果だ。直近の国会議員補選や州議会選挙は、ナジブ氏を前面に押し出した与党が地滑り的な勝利を収めた。

今後の焦点は海外の捜査の動向だ。ナジブ首相の不正関与を示す証拠があがれば、首相の座に居座るのは難しいとの見方がある。政権の弱体化をにらんで資金流出が進めば、景気の減速を通じて国民の不満が高まる可能性もぬぐえない。

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